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しかし早妃くんは続きを喋ろうとはせず、胡散くさい笑顔でにこにことするばかり。その所為で子犬くんがこちらを向いてしまった。 ううう…見るからにビビってる俺に、なんでわざわざ発言させようとするんだ…! 「………さ、早妃くん、とは、1年生の時に…同じクラスで…でした」 仕方なく震える声でそう答えると子犬くんは「へー!そうだったんすかぁ!すげぇグーゼン!」と明るい声で反応を返してくれた。この子意外といい子? 「ちなみに俺は1年の時は、春と同じクラスだったぜ」 先程喧嘩をおっ始めようとしていた内のもう1人が自慢げに口を挟んできたが、すぐに横からハッと嘲笑う声。早妃くんだ。 「なんの自慢だよ。そんなん言ったら俺は今絶賛、春と同クラだっつの。羨ましーだろ?」 「あ?うっせーなっ。てめーこそ自慢すんな!つか、仲花クンは1年の時の春知ってんの?俺、あの勇姿は忘れらねえんだよな」 「え………ぇと、」 「1人でチーム潰したやつだろ?もうそれ何回も聞いたし、知らねえ奴なんかいねーだろ。なあ、仲花クン」 「ふぁい…!!知って、まひゅっ…」 ……ああ、また噛んじゃった。最近やっと春さんの前で舌噛まなくなったというのに、傷だらけの俺の舌。アーメン。 そして、チーム潰しが真実だったというのは知りませんでした。咄嗟に出た知ったかぶりです、ごめんなさい。知らないって言ったら絶対目の前の人たちに怖い顔されるし! 「ねえーねえー!仲花サン!」 「は、はい!」 心の中で謝罪しまくってると子犬くんがこちらにズイッと顔を近付けてきた。 「仲花サンの前での春さんってどんな感じなんっすか!?」 「えっ…べ、別に、普通…ですよ」 「普通じゃ分かんないっすよー!なんか、もっとこうエロいとかぁ、甘えてくるとかぁ…」 「バッカ!おめー春が甘えるわけねーだろ!あの春だぜ?やっぱ気が向いた時にだけ構う強引で俺様な感じだろ!」 気が向いた時にだけ構う?俺様?そうだったっけ。まあ、強引なのは合ってる気がするけど。 「んなの分かんねえじゃねーすか!俺、春さんのセフレに対する態度しか見たことねーし、恋人に対してどんな感じなんかめっちゃ気になるんスよ~!」 「おい、テツ。セフレの話は…」 「あっ…」 子犬くんがパッと口を抑える。何やら気を遣ってくれたようだが、別にそんなことは重々承知しているし今更気にはならない。 春さんにセフレがいたことくらい、噂で何度も聞いていた。

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