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「…………」 先程まであんなに煩かった周りが静かなのだ。おかしいな、と春さんから目を逸らし周りを見渡した俺は堪らず「ヒッ」と息を飲んだ。 まるで地獄絵図。 はたまた任侠映画のワンシーン。 目の前に居る強面幹部達の目はこれでもかというくらいギンギンに見開かれ、細めの眉はキッと吊り上がり、口はワナワナと震え今にも暴言を吐きそうに歪められていた。 ――死…? ハッ!? …あっ、危な…! あまりの恐怖に一瞬死を連想してしまったが、いくらなんでもここで生死を分けることは起きはしないだろ。 しかし突然豹変した彼らのヤバすぎる表情に何か気に触ることでもやらかしたのかと心臓がバクバクしている。 あまりにも怖すぎてチビりそうになったので、もう一度春さんの方を向き「春さん、俺、ちょっとトイレ」と一旦逃げることにした。 別名チビる前にしっかり出しておこう作戦だ。 俺にネーミングセンスを問うのはやめてくれ。 「場所わかる?俺も行く」 「あー、俺もトイレ行きてーから、仲花クン教えたげるよ」 春さんの動きを止め、早妃くんが手を挙げる。そのままさっと席を立ったので俺も早妃くん側から抜け出す為、ずりずりとケツを移動させて席を立とうとしたが、不意に後ろから手を掴まれた。 驚いて振り返ると、春さんが俺の右手を掴んでいる。 「春さん…?」 「春。そいつらにしっかり説明しねーと後がうるせーぞ?俺は知らねえからな。あ、仲花クンこっちですよー」 早妃くんの言葉に、チッと小さく舌打ちをした春さんは名残惜しそうに俺の手をするりと離す。手が離れたのを確認してから再びのんびりと店の奥に向かって行く早妃くんに、俺も転びそうになりながらも後を追った。 なんの説明をするのかと不思議に思っていたが、少し離れてから「春!!!?なんだ今の顔は!!!」「あんな顔もできんのかよ…!」「春さんやべーす!俺ドキドキしちゃいました!」と騒ぎ出す声が飛び込んできた。 …みんな春さんが笑うこと知らなかったのかな。

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