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雨と涙とイチゴパフェ

「雨ヤバイねー。傘持ってきた?」 「ばっちり」 「俺もさー、朝彼女から傘持って行くの忘れないでねって言われて持って来たんだけど、ここまで降るとは思わなかったなあ。優秀な彼女に感謝~」 「そうだな。さすが叶の彼女」 「羨ましい?羨ましい?」 「羨ましい」 「………どうちたんでちゅかー?やしゅなりくん。おねむの時間でしゅかー?」 「おっ…やめろよ!?気持ち悪いな!」 「もー、やっと覚醒した」 授業も終わり机に伏せっていると前の席から叶がこちらに体を向け、あーだこーだと喋っていたが突然の赤ちゃん言葉に鳥肌が立って顔を上げた。 どうせアイドル顔に似合わない下品な笑みでも浮かべてるのかと思ったが、予想とは違っていつも通りの可愛い顔だった。 「どうしたの、元気ないじゃん」 「そうか…?」 「元気ないよ~。気遣いのできる叶くんとして名高い俺よ?気付かないわけないじゃない。なんかあったんでしょ、狩吉と」 「う……」 狩吉。 今、一番敏感に反応してしまう名前を出されて言葉に詰まる。そんな俺を見て、自称気遣いのできる男は小さく笑った。 「やっぱり。話しなよ。どーせ、俺しか相談する相手いないんでしょ?」 「…なんだよ、人が友達居ないみたいに言ってくれちゃってさ」 「友達は居ても狩吉のこと話せるのは俺だけじゃん。ほれほれ、話してみ?」 「まあ…そりゃ…そうなんだけど」 こてん、と再び机に顔を落とす。なんだか今日は体が怠い。窓の方に顔を向けると外は薄暗くしとしとと降り続く雨。雨の日ってなーんか元気出ないんだよなあ。 来るときは降ってなかったけど、昼過ぎた辺りから夕立のように激しい雨が降り出しそれから少し落ち着きはしたが、放課後の今までずっと降っている。 グラウンドはきっと雨でドロドロになってるんだろう。運動部の奴らが何人かユニフォームのまま廊下を行ったり来たりしてるのを見た。 練習する場所がないのか今日は〇〇室集合だって、とかミーティングになったとか言っているのが聞こえてきたが、それも数分前の話で今は廊下も静かだ。

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