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………って、
騙されるかぁぁぁあああああああ!!?
なんか今いい話っぽく終わりそうになったが俺の悩みの種は自分が平凡であること、じゃない!
確かになんでこんな普通な俺と春さんが付き合ってるのかという根本的な話で全く違うということもないけど…叶の強引な思い込みに流されるところだった!!
「っだあ!離れろ叶!俺は自分の容姿について悩んでたんじゃない!」
「んぅぅ…安成って、あったか~い。人肌恋しい~」
「おい!?人の話を聞けよ!?はーなーれーろー!」
「でも抱き心地は良くないね。やっぱり柔らかさは女の子に劣るっていうかあ…」
「勝手に抱き付いてきといて、勝手に自分の彼女と比べるのはやめてくれ!惨めになるだろ!」
「はー、でもいい感じだよ」
いい感じって何がだ!というかなんだこいつ!こんな俺よりも小さく華奢な体のどこにそんな力が眠っていたんだ!
…違うな。俺の方がモヤシだからか。俺がひ弱なだけか…
ギャアギャア騒いでいるうちに、段々とバカらしくなってきて俺は抵抗をやめて好きなようにさせることにした。
「えへへぇ、俺の勝ち~」
「…勝負してないし」
そもそも俺がこいつに相談しようとしたのが間違いだったんだ。
春さんが何を考えてるのか、本当に元カノを俺に重ねているのか…なんて叶に分かる筈ない。
騒いでほんのちょっぴり元気が出ただけマシだろう。
だけど、やっぱりこんな気持ちのまま春さんには会いたくないと思った。
なんでこんなにも嫌な気持ちになってしまうのか…あんなことを聞いた後に自分の気持ちに気付くなんて本当に俺は馬鹿だよな。
俺、いつの間にか春さんのこと好きになっちゃってたみたいだ。
俺が春さんのこと好きだって気付いたのに、春さんは本当は俺のことが好きじゃ無いかもしれないなんてそんなオチ面白くもなんともないよ。
代わり、なのかな。本当に。
「あ」
ぐるぐると胸が苦しくなってきて、涙が浮かびそうになっていると抱き付いたままだった叶から短い声が聞こえた。
なに?と反応を返す前に、突然強い力で体が後ろに引かれ、温かかった叶の体が離れていく。
代わりのように背後から首に回された腕。強引な動作とは裏腹な優しい力加減に目を見開いた。
視界の端に派手な金髪が入り込んできて、柑橘系の香りがほのかに鼻腔を掠める。横を見ると想像よりも近い場所に整った顔があった。
「はっ、春さん!?」
いつの間に現れたのか、春さんが俺を後ろから抱き締め、怖い顔をしていた。
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