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「もう一度言いますけど、あなたと2人でいるとこなんて兄貴に見られたら確実に絞められますよ、俺。そんな危険冒してまで聞く話じゃなかった。本当に。女々しいし面倒臭い。あの子の方がまだマシってもんです」
ボロクソ。すごいボロクソに言われてる。さすがの叶だってここまでは言ってこないぞ。
でも今気になる単語が聞こえて来たのを、俺は聞き逃さなかった。
「………あの。あの子って、前も言ってたけど、春さんの元カノのこと…?」
「そうですよ。想像してたことにはなってないみたいですけど…いや、まあ面倒臭いことには変わりないか。だから忠告したのに」
やっぱり。
桃哉くんは元カノと春さんの間であったこと知ってるんだ。
「桃哉くん…!も、もし良かったらその意味…教えて、くれたりしない…かな?」
桃哉くんが俺の言葉に片眉を上げて、さっとメニューを広げる。パラパラとめくった後、一番後ろのスイーツのページで指が止まりイチゴパフェを指差した。
「俺、これ食べたい」
「………どうぞ」
交換条件ということだろうか…うう、仕方ない。
俺はテーブルの端に置いてあった呼び鈴の電子ボタンを押した。
「でもさー、兄貴じゃなくて俺から聞くなんてルール違反じゃないですか?そういうことを…あ、イチゴパフェください。はい、1つ。…そういうことをするから本人の意思とは違った情報が入ってきて、憶測でしか判断出来ず余計混乱するんですよ?俺が早妃さんみたいに悪意を持った情報流したらどうするつもりなんですか」
現れたホールスタッフに会話の中で流れるように注文を終えた桃哉くんはメニューを閉じて端にカタンと置く。
「…悪意、あったのかな」
「悪意しか無いでしょう。あの人兄貴のこととなるとちょっとヤバイとこありますからね。何回か会ったことありますけど、弟の俺に対してはめちゃくちゃ甘いですよ。あの人兄貴に陶酔してるから。だから、あなたみたいな人が恋人なんて認めたくないんでしょうね」
「……俺やっぱ聞くのやめるよ」
「何言ってるんですか、もうパフェ頼んじゃったし教えてあげますよ。そんな顔しないでください、面倒臭いから」
なんだよ!結局教えてくれるなら最初から普通に教えてくれたらいいのに!意地悪だなホント!
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