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心の中で桃哉くんへの理不尽な怒りを覚えていると、小さく吹き出して笑われた。
「怒ってます?前も思ったけど分かりやす過ぎますよね。何考えてるのかすぐに顔に出る」
笑う顔があまりにも春さんそっくりで、一瞬息が詰まった。まるで、春さんに笑いかけられているような…不可抗力で頬を染めると今度はジトっと目を細められる。
「言っときますけど俺は男には興味ありませんから。弟に乗り換えるのはやめてくださいね」
「のっ、乗り換えないよ!もういいから、教えてくれるなら教えてよ!」
「人に物を頼む態度とは思えない。…まあいいでしょう」
仕方ないな、みたいに溜息をついて桃哉くんがジト目をやめた。
「とりあえずぶっちゃけますけど、あなたが元カノと似てるというのは否定しません。顔が似てるというか系統が一緒ですね。けど、兄貴が元カノの変わりにあなたを選んだのか、という質問には答えられません。それは兄貴にしか分からないことですから」
覚悟をしていた事ではあったが、言葉を選ばない発言に鈍く痛む胸。ぎゅ、と膝の上の拳を握りしめた。
「で、俺があなたに言った言葉の真相ですけど、元カノ俺の友達だったんです。同じミクたん好きで何度か家に遊びに来たこともあって、そん時普段は家に居ない兄貴が珍しく早い時間に家に帰って来たんですよ」
「あ…じゃあ元カノって俺たちの一個下なんだ」
しかもミクたん好きとは気が合いそう。
…ってそんなことはどうでもいいんだ。
「そうです。で、何故か兄貴あの子見た瞬間に惚れちゃって、まああの見た目じゃないですか?最初はあの子怖がってたんですけど、いやー、優しいのなんの。普段の俺に対しての態度は何!ってくらい優しく接してるうちに絆されちゃって付き合うことになったんです。顔はイケメンですからね、俺に似て」
「…自分で言うんだ…」
しかも生まれた順番から言えば似てるのは桃哉くんの方ではないだろうか。
そして何よりも気になるのは付き合うまでの流れが、殆ど俺と同じだということだ。
お待たせしました、とホールスタッフの女の子が桃哉くんをチラチラ見ながらパフェをテーブルに置いた。
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