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「…イチゴ食べる?」
「へ?…あ、くれるの?」
俺の顔を見ていた桃哉くんがヒョイとアイスごとイチゴを掬うと目の前に差し出してくれた。
「アーン」
「い、いや、1人で食べられるよ」
「ほらほら早く!」
「ええっ!?んぐ」
まさかのアーンに慌てふためいたが容赦なくスプーンが口に入り込んできた。口の中に広がるアイスの冷たさと広がる甘さ。スプーンが口から抜かれ、イチゴの甘酸っぱさを噛み締めてゴクンと飲み込む。
「…美味しい」
「でしょう」
俺が掬い切れなかったアイスの少し残ったスプーンをペロ、と舌で舐めて桃哉くんが笑った。
「というわけで真相は終わりです。その後の話は早妃さんの言ってた通り荒れまくってました。最近ようやく落ち着いてきたと思ったらあなたが現れた。はい、以上」
グラスに残ったパフェをパクパク口に入れて、あっという間に空にすると残っていたピーチジュースも飲み干す桃哉くん。イチゴパフェにピーチジュース…糖分摂取がヤバイな。
「んじゃ、俺はもう帰ります。ミクたんを早く堪能したいし、俺はもう殴られたくはない。マゾじゃないし」
「あっ…うん………あああの!桃哉くん!」
少し迷ったが、席を立つ桃哉くんを慌てて呼び止めカバンを漁る。確か、まだ入ったままだったはず。
……あった!
「これ、もし持ってなかったら…」
そっと出したのはミクたんのコンビニ限定のお菓子の付録についてるキーホルダー。ファンにはたまらないレアなスクール水着姿のやつだが、まさかの2個出るという運を使い果たしたやつだ。
そしてミクたんスク水ver.を見た瞬間桃哉くんが奇声を上げた。
「ひいっ!」とビビる俺など気にも留めず、キーホルダーに顔を寄せ興奮気味にぶるぶると震え出す。
「ミッ、ミクたっ…スクっ…スク水!?え!?なんで!?俺何十個も買ったのに全然出なくて…は!?待って!なんであなた、これ!、?」
桃哉くんのテンションが凄い。マックスハイテンションというやつだ。あまりの興奮ぶりに驚きながら、キーホルダーを手渡すと両手を震わせながら受け取ってくれた。
「実は、その…俺もミクたん好きなんだ。それ2個出たから、貰ってくれたら嬉しい」
「マ、マ…マジかよ。…あっ?だからあそこで突っ立ってたんだ!……………ところであなた、名前なんて言うんです?」
はた、と我に返った桃哉くんは控えめに俺を見つめる。そんな彼の温度差に俺は吹き出してしまい、そういえば自己紹介もまだだったと可笑しくてなってしまった。
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