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一ヶ月後の桜
衝撃の事実に気付いたのは朝起きて朝ご飯を食べて歯を磨いて制服に着替え、ネクタイを結んでいる時だった。
何気なく見たカレンダー。部屋にあるカレンダーに直接予定を書き込むのが昔からの癖で、携帯のアプリを使用せず未だアナログな方法でスケジュール管理をしている。
春さんと約束したある日のこともきちんと記入していた。
約束。それは。
「今日、約束の1ヶ月だ…!?」
春さんとのエッチ解禁日とも言う。
あれ!?嘘だろ!?もう1ヶ月経ったの!?バタバタとカレンダーに駆け寄るが、近くで見ても何度瞬きしても今日の日付のところに、下手くそな桜の絵が描いてある。妹が勝手に部屋に入ってくるから、バレないように、でも忘れないようなんと描こうか迷って、結局桜にしたのだ。
俺たちが出会ったのは桜の樹の下。捉えように寄ってはロマンチックだよな。実際はただ桜の樹の下でキスされただけだけど。
……おかしいな。
実際もなんだかロマンチックだ。
文章に起こすとロマンチックな感じしかしないが、あの日のあの状況を見た人が居たならば確実にロマンチックだとは思わないだろう。
俺、めっちゃ叫んだし。ただひたすらビビってただけだったし。色気のかけらも無い。
「でもさすがに春さんが日にちまでしっかり記憶してカウントしてるわけないよな。…うん、うん、大丈夫!」
カウントしていたら逆に怖い。俺は独り言で自分を納得させ、学校に向かう為に家を出た。
ーーー
1日の授業を終え、春さんの登場を待つ時間。今日は朝別れる際に、放課後迎えに行く、と言われていた。
叶は早くも彼女とデートだとウキウキしながら教室を出て行った後だ。この間の件はしばらくグチグチと文句を言われたが、もう忘れたのか今は何も言わなくなった。ちなみに、
「狩吉ってやっぱ独占欲強い系じゃん!俺の予想は当たってたんだ。てゆかさあ、俺だけじゃなくて安成なんて誰も取らないよ!ねえ?安成!」
と言われたが俺はなんと返事したんだっけ。
とりあえず俺に謝れ、と言った気がする。…叶って俺のこと本当に友達だと思ってくれてるのかな。
まあいいや。
それは今どうでもいい。問題は春さんだ。
朝はいつもと変わらなかった。相変わらず俺に甘い顔をして、寂しそうに別れを告げた。
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