心の準備が出来ているかと聞かれたら正直できていない。一応いざという時の為に男同士のやり方についてネットで知識を得たが、それだけだ。 多分99.9%俺がネコ側になる。そんな気がする。だから受け入れる事に関しては心構えをしているが、本当にできるのかと言われると首を傾げるのが実のところ。 というか春さんは俺という平凡な男相手に、反応できるのか…答えの出ない問題を悶々と考えてしまう。 そして肝心の元カノ身代わり問題は、未だに本人に聞けず仕舞いで消化不良を起こしていた。 だって代わりにしては対応が違い過ぎる。 元カノには泣かせるまでの束縛をしていたというのに、俺には全くしてこない。 嫉妬を見せるときはあるが、携帯見せろ、とか俺以外の連絡先消せ、とか普段一緒にいる叶に対してベタベタするなとかそんなこと一切言ってこない。 ただ、登下校を繰り返し、常に一緒にいる感じだ。 キスもするし、優しく抱き締めてもくれる。 約束を守ってそれ以上は手を出してこないし、考えてみると春さんは出会った時から俺への態度が変わらない。 変わったと言えば、春さんではなく桃哉くんだろうか。 狩吉家に行くと今までは全然出てこなかった桃哉くんがたまに顔を出すようになった。 近くに寄ってこそ来ないが、俺がトイレに行った時を見計らったように出てきてくれるのだ。なんの会話もない。ただ、挨拶を交わす。それだけ。 本当はミクたんの話をしたいのかな…と思うのだが、まず俺が春さんに自分がミクたん好きのオタクだということをバラさなければならない。バラすのはまだ早い気がするし、万が一にも引かれたら怖いのでもう少し様子を見てから打ち明けようと決めている。 ただ桃哉くんには顔を覗かせてくれることが嬉しくて、たまーにダブったミクたんグッズを渡してたりするんだが…あ、もしかしてソレ目当て？桃哉くんならあり得るな。 ガラッ 暇潰しにここ最近あった出来事を思い返していたら、教室の扉が開く音がして振り返ると春さんが立っていた。 「安成、かえろ」