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★麻也王子、行方不明…→19-9
諒は、ホテルの部屋で黒のパイルの部屋着で、麻也の帰りを待っていた。
一人きりで静かな部屋だと、色々と考えてしまうが…
ーツアーでは麻也さんは俺だけのものだから…
…ステージの上でも密着を見せびらかして、
行く先々で変わるホテルのダブルベッドの上でも、
あの、最高な王子の麻也と抱き合えるのは、この俺だけ…
…実は、弱っている時の麻也を温めてあげるのも大好き。
それは他の誰にもできないことだから…
(あのジジイになんて…)
人間は忘却の生き物とは言うけれど、坂口のあの言葉のダメージが薄れるわけでもないのに、
諒の体はまた、「愛する麻也」に反応するようになっていた。
(やっぱり俺には麻也さんなしの生活なんて考えられないよ…)
だからこそ苦しむ。
しかし、あれほどの人を手に入れて、それも顔が広く知られる職業で、
ねたみやそねみを受けないわけがないのだ…
その時、携帯が鳴った。
真樹から、の表示だった。何だろうと思いながら出てみると、
<諒、兄貴戻ってる? >
真樹らしくない、すごく焦った声だった。
諒はびっくりしてしまい、
「いや、戻ってないけど…」
そう答えるのがやっとだった。
やっとのことで、
「ちょっと廊下見てみるよ…」
とベッドを飛び降り、走ってドアを開け、廊下を見渡したが、麻也の姿はない。
「いないけど…えっ…どうしたの…? 」
<電話とかメールとかは? >
「ないよ。そっちにいないの? 何で?どこに行ったの? そんなに酒飲んでたの? 」
あまりのことに、血の気が引いていくのが自分でもわかる。
<一人だけで消えちゃったんだ。携帯にも出ないし。じゃあまたこっちで探すよ。ごめん。>
「俺もそっち行くよ! 」
<いやすれ違ったら困るから、部屋にいて。
動きがあったら教えて。あっ、諒も兄貴に電話してくれる?…>
じゃあね、と真樹に電話を切られても。
あまりのことに諒も携帯を持って立ち尽くすばかりだった。ホテルの広いダブルの部屋で。
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