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★麻也王子の焦りの色→19-15

 しかし須藤は諒の目をしっかりと見据え、 「そんなおかしな接待は断じてさせてません。 そして薬もきちんとしたものなのでやめてもらうわけにはいきません。」 「本当かよ…」 諒はうつむいてボヤいたが、須藤は、 「諒さん、私個人も事務所も、接待はあっても怪しげな薬を使うような、 諒さんの知らないようなものを麻也さんに飲ませなきゃいけないような接待なんかしていません。」 冷静に、そして強く、須藤に言われて諒は取り合えず安心した。 須藤はこうも言った。 「こんなことになって、社長も私たちも本当にすまないと思ってます。 麻也さんにオーバーワークをさせてしまって。」 そして、あさってのライブの後、一度東京に戻ったら病院の予約が入っているとも言われた。 「今日はもう遅いですから詳しいことは明日にでも話します。 諒さんにももうそろそろ休んで欲しいですし。」 そこまで言われて諒は我に返り、真っ青になって麻也の方を振り返った。  麻也は放心したように、そして会話から逃れたがるように、仰向けになって天井を見ているだけだった。 顔色は帰ってきた時のよりは少し良くなったようだったが… 諒はようやく前に歩み寄ると、複雑な気持ちで愛しい人を見下ろした。 (変な事とかされなかったんだろうか…) しかし、はっと思い返して、 「ねえ、麻也さん、念のため病院に行った方が良くない? 」 すると麻也は言葉を失い、その瞳には驚きというより焦りの色が…

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