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★麻也王子、救急外来へ→19-6

そして麻也は少し困ったように、 「念のためって…」 須藤も、 「少しの間でも記憶が飛ぶぐらいですし、動けなくなったのもあるし、確かにその方が…」 「…兄貴がこんなになるの見たことなかったからパニクっちゃったけど、確かに先に病院に連れて行った方が良かったかもね…」 それを聞いた麻也はほっとしたような表情になり、しかし、 「…でもかなり落ち着いたから…」 と言ったが、他の四人はみんな首を横に振った。 そして、じゃあ車の手配を、と鈴木はフロントに電話をかけ始めた…  須藤には一応止められたが、諒は、明日は移動だけだからといって麻也に付き添った。 大型ハイヤーの一番後ろの席で、諒はいつものように麻也の肩を抱き、密着していた。 麻也も黙ってされるがままになっていた。 真樹たちの様子を見ていても、連れ去ろうとした人間に、 麻也は怪しいことはされなかったようだ。 その時、麻也は小さく、 「あっ… 」 と声を上げた。 「…俺、携帯どうしたんだろう…」 とスーツのポケットを探ろうとすると、真樹が振り返り、鈴木が預かっていると教えてくれた。 「そのポケットに入ってたんだけど、落としたら困るね、って。」 物盗りではないとしたら、やっぱり麻也その人が目当て… 諒は暗い気持ちになったが、麻也はほっとしたように良かった、と言う。  …その街の一番大きい総合病院の救急外来で、麻也は診察を受けることができた。 当直の若い男性医師も、ディスグラのことは知っており、好印象を持っている様子で麻也を診てくれた。 鈴木が差し出した麻也の薬の説明書を見つつ、これまでの説明を聞いていたその医師は、 机の上の事典をめくり始め、 「薬が効きすぎたんじゃないかと思います。点滴して休んでってください。」 そして…

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