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★麻也王子、恨みの葡萄柚→19-17
医師は、
「やっぱり最後に飲んだグレープフルーツジュースがあやしいなあ。
最近の論文なんですけど、
これは医者にもまだあまり知られてないんですけど、
この手の薬と飲み合わせが悪いみたいで、
アルコールが入ってなくても、
人によっては意識を失ったりすることはあるみたいなんですよね...」
東京で次の診察には必ず通院すること、
それまでは今ある薬以外の薬は飲まないことだけを守ればいいことになった。
「あと、柑橘系は避けてくださいね…」
一同ほっとしたが、横たわった麻也は看護師に右腕を差し出しながら、唇をかみしめていた。
そんな麻也に近づくと真樹は、
「やっぱ諒に知ってもらってよかったんじゃない? 」
と優しく声をかけたが、麻也の表状は固いままだった。
諒もさすがにその様子が痛々しく思えてきた。
「念のため、麻也さんが帰る時までどなたかついていてほしいんですが...」
医師の言葉にはみんな一斉に、
自分が、と答え、これには麻也も声をあげて笑った。
そしてようやく明るい表情で、
「うーん、誰に残ってもらおうかな...」
といたずらっぽく言う。
医師も症状は軽いから、誰でも都合のいい方が...というので、
「じゃあ僕が。」
と諒は安心して言うことができた。肉親の真樹しか許されないのではと不安だったからだ。
「諒、悪いから俺も残るよ。」
と真樹も言ってくれたが、麻也は、心配だからじゃないのか…と苦笑いしていた。
「もう兄貴は黙っててよ。心配してるのは当たり前じゃん。」
真樹が怒ると今度は鈴木が須藤に、
「私も残ります。チーフは直人さんのためにも戻ってください。」
と進言した。それでも須藤は心配そうだったが、
結局「直人のためにも」という言葉に動かされて、
一人、ホテルに戻っていった。
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