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若様、彼を買う。

〈鬼八郎目線〉 透き通るような白い肌、俺の腕くらいかもしれない細い足、抱いたら折れそうな肩、ふるふると震える唇は青いが、形が良くふっくらとしている。 それより、俺が目がいったのは、その人間の瞳だった。 右目が青空のように明るい青で、左目は夏の夕暮れを思い出させるような赤みを帯びた紫だった。 「めちゃくちゃ……綺麗だな……」 あまりの美しさにぽーっと見とれてしまい、不審に思った鬼一が、「若?」と声を掛けてきたのにも気づかなかった。 「かわいい顔をしていますが、性別は男!年齢は15歳で名前はー……これ、何て読むん?まぁ好きに付けてくださいな!始めは100万から!」 「150万!」 「200万だ!」 「400万!!」 「430万でどーだ!」 「こっちは600万出すぞ!!」 「よし、1000万!!」 どんどん値段がつり上がっていく。 ポンポンと飛び出す大金に、俺は「ヤバい」と思った。 取られたくない。 人間の相場がどれくらいか正直分からないが、 俺は咄嗟に手をあげて、叫んだ。 「一億!!!!!」 その瞬間、闇市は水を打ったように静かになった。 横で、鬼一は頭を抱え、鬼三はあまりの金額についていけてないのか「一、十、百、千……」と指を折って数えている。 絶対鬼一に呆れられてるし、親父には半殺しにされるだろうけど、それでもいい。 俺はあの人間を買う。 心の底から欲しいと思ったんだ。 俺を見つめるあの子は、瞳を潤ませていた。

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