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ご対面
闇市に着くと、言いつけ通り待っていた鬼三 が、手を振って出迎えた。
「若!兄貴!お金、どうでした?」
「おう!ちゃんと借りてきた」
「さすがっす!っていうか、若は何で着物着てないんすか?」
鬼三は頭にはてなマークを付けながら、聞いてきたが、鬼八郎 は「男には、脱がねばならぬときがあるんだ、鬼三」と鬼三の頭をぽんと撫でた。
「きっと……色々な困難があったんすね……若、俺しびれたっす!!一生ついていくっす!!」
鬼三は泣きながら、鬼八郎に抱きついた。
「ついてこい、ついてこい」と笑っていると、狐がそろーっと出てきた。
「あのぅ……お金……」
出てきにくい雰囲気ではあったが、このままでは話が進まぬと思い、狐は遠慮しながら催促をした。
「あ!これ、金な!」
狐は鞄の中を改めて、またもやひぃふぅみぃ……と数え出した。
札束を整えると、「はい、確かに頂戴致しやした!」と金を受け取った。
そして、狐は暗幕の後ろに行き、「さ、おいで」と鎖を引きながらやって来た。
鬼八郎はドキドキしながら、美しい少年と対面した。
近くで見れば見るほど、美しく、瞳の色も吸い込まれそうなほどだった。
狐は鎖を解くと、「あんたはもうこの御方に買われたんや。しっかり働くんやで」と言い聞かした。
瞳は不安に揺れて、今にも泣きそうな顔をしていた。
「あ……っあの……!俺、鬼八郎って言うんだ……えと、だからその……」
鬼八郎が緊張してどもりまくっていると、鬼一 が横から冷たい声で「あんたは奴隷だ。せいぜい若のために死に物狂いで働くんだな」と言い放った。
「はぁ!?誰が奴隷になんかするか!!」
「あぁん!?じゃあ、何のために買ったんだよ!」
「な、何のためって……っ」
「あぁ、夜伽 の相手にでもするのか。確かにこの器量なら、男でもいけるか」
「しねぇよ!!そんなひどいことするわけねぇだろ!!」
「け、喧嘩は止めてくださいっす~~~!」
鬼八郎と鬼一が言い争いをし、鬼三が必死で止める。
「あの……」と美少年が声を小さくあげると、鬼八郎と鬼一は「あぁん!?」と喧嘩のノリのまま、(まさに本物の)鬼の形相で睨んだ。
きっと緊張の限界だったのだろう、「ひっ!」という悲鳴をあげて、倒れてしまった。
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