12 / 49
幸せな夢を見続けていたい
〈カノン目線〉
僕が目を覚ますと白い天井があった。
爽やかな朝の風が、窓を通して白いカーテンを靡かせている。
あぁ、いつもの朝だ。
「カノン様、おはようございます。お召し換えをしましょうね」
僕の乳母のジャクリーン。
優しいけど、怒るとちょっぴり怖いんだ。
絹でできたパジャマを脱いで、白いシャツに腕を通し、青地に金糸で花の刺繍がされている服を羽織る。ジャクリーンは茶色のリボンタイを結んでくれた。
顔を洗って、食堂にいくと、優しいお父様とお母様、それから僕の自慢のお兄様が「おはよう」と言ってくれる。
僕も「おはよう」と返して、席につく。
家族皆で、祈りを捧げて、食事をとる。
とてもとても幸せな時間。
「ご飯を食べたら、庭に出よう。もうすぐコスモスが咲くからね」
お兄様は優しく、僕の手を引いて、庭を散歩した。
そうだ、コスモス。
お母様と一緒に植えたんだった。
庭にはたくさんのコスモスが咲いていた。
「綺麗だね、お兄様」
お兄様を見上げると、お兄様は険しい顔をしていた。
「……このコスモスを見るのも最後だね」
「え?」
驚いた瞬間、周りが急に暗くなり、真っ黒な手が僕の手を掴み、お兄様と僕を引き裂いた。
「やだ……っ!お兄様!!お兄様!!」
僕とお兄様の間に鉄格子がはまり、お兄様も手を伸ばしている。
「カノン……っ!必ず助けにいくから!!だから……!!」
生きていて
確かに、お兄様はそう言ったのだ。
僕はお兄様の手を掴むことができなかった。
ともだちにシェアしよう!