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久々のお風呂

〈カノン目線〉 服を脱いで、前をタオルようなもので隠す。 鬼八郎様に言われたのだ。 例え、同性でも見せるのはよくないって。 皆隠しているのですか?って聞いたら、すごく仲良くなった人なら見せてもいいって。 それって鬼八郎(きはちろう)様と鬼一(きいち)様、それから鬼三(きさ)くんのことかな? 僕も早く仲良くなりたいな。 「ふぁぁぁ……!」 僕は、とても感動してしまった。 木で出来たお風呂なんて、初めて見た。 それに、とっても大きい! プールみたいだ! 「すごい……すごいです……!」 僕は鬼八郎様の方を見ると、鬼八郎様は僕の顔を見てくれない。 お風呂に入る前から真っ赤なのだ。 「鬼八郎様、大丈夫ですか?やはり、お加減が悪いのでは……」 布団をかけずに休まれていたから、きっと風邪を引いてしまったのだ。 「だ、大丈夫!ほら、風呂入ろ」 鬼八郎様は桶にお湯を入れて、肩にざばっと掛ける。 僕も真似をして掛ける。 ここでは、お湯に入る前にこうしなきゃいけないんだ。覚えておかなきゃ。 鬼八郎様が先に入ると、満タンに入っていたお湯が一気に流れた。 僕は「わわっ」と変な声をあげて、ビックリしてしまった。 「カノン、大丈夫か?」 「だ、大丈夫です……!こんなにお湯流れちゃってなくなりませんか?」 「ははっ、なくならねぇよ。ほら、あそこからずっと流れてるから」 本当だ。木で出来た小さな入り口からお湯が絶えることなく流れている。 こんなに無限に流れ続けているのが、不思議だ。 「カノン、早く入らねぇと体が冷えるぞ」 鬼八郎様は僕に手を差しのべてくれた。 僕はその手を取って、湯船に入った。 初めは体が少し冷えてたから、ぴりぴりとしたけど、だんだんじんわりと温かくなってきた。 「肩まで浸かるんだぞ」 「はい!」 僕は肩まで浸かる。 あったかーい。 それに何だかいい香りがする。 こんなにお風呂って気持ちいいものだったっけ? 疲れがお湯に溶けていくみたいに、僕の体はふにゃふにゃになっていくみたいだ。 「気持ちいいか?」 「はい……なんだか溶けてしまいそうです……」 「そうか。良かった」 鬼八郎様は微笑んだ。 鬼八郎様って、やっぱりかっこいい方だなって思う。 男らしい、きりっとした目で、体も大きくて……。 鬼っていうから、もっと怖いんだと思ってた。 でも、鬼八郎様はとても優しい。 最初、僕の背中を撫でてくれたとき、暖かくて安心したのを覚えている。 釜茹でにされそうになったときも、あんなに汗をかいて走ってきてくれた。 優しい……。 好きだな……。 「鬼八郎様、僕、好きです……」 「……え?」 小さな声で言ったから聞こえなかったかな? 僕、鬼八郎様の優しいところ好きですよ。 僕はだんだん眠たくなってきた。 安心したからかなぁ……? 「おい……カノン、大丈夫か?」 鬼八郎様のその言葉を最後に僕は意識を手放した。

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