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久々のお風呂 二

鬼八郎(きはちろう)目線〉 あぁ、困った……。 俺は今、脱衣場にいる。 カノンは、俺が着せてやった着物の帯をするりと解いて、着物を脱いだ。 正直、目のやり場に困るのだ。 金色のふわふわの襟足から覗く、白いうなじ。 抱き締めたら折れそうな、細い肩。 腕も、俺の腕とは違って柔らかそう。 柔らかそうといえば、太ももだ。触るとすべすべで、ふにふにしてそうだ………って、 目のやり場に困るとか言いながら、俺、めっちゃガン見しとる……。 そんな自己嫌悪をしながら、俺も帯を解いて、着物を脱いだ。 すると、カノンが「うわぁ……」と声をあげた。 何やら、キラキラした目で俺の体を見ている。 「ど、どうした?カノン」 「鬼八郎様、腹筋が割れてて、かっこいいです……!」 え、腹筋? 「そ、そうかなぁ……?」 「僕、体細いし、運動もできなかったから、全然筋肉つかなくて……鬼八郎様が羨ましいです!」 筋肉ムキムキのカノンとか、想像できないな……。 「カノンはそのままでも充分だ!」 とりあえず、カノンはそのままで、充分かわいい! そんな会話をしながら、カノンはするりと下着を脱いだ。 俺は、見てはいけないっ!カノンの絶対領域だぞ! と思いながらも、やはりガン見してしまった……。 小さなゾウさんが、そこにいた。 想像通り、アソコも可愛いんだなって……そんな毎日想像してないからな!! 一日の内、合計一時間くらい想像したくらいだ!! 「鬼八郎様……そんなに見られると、ちょっと……恥ずかしい、です……」 カノンは俺の汚らわしい視線を感じたのか、両手で股間を隠した。 「ご、ごめん……っ!とりあえず、これで隠して!!」 手拭いを渡すと、それをカノンは細い腰に巻き付けた。 「ここの人たちは、隠してお風呂に入るのですか?」 「え!?あー、まぁ……すごく仲良くなるまでは、お互い見せないんだ!」 カノン、ごめん……俺、嘘ついてる。 全然知らないおっさんとかが風呂場にいても、隠さず俺は入ってるわ。 「そうなのですか……!勉強になりますっ!」 うぅ……純真無垢な瞳が痛い……っ! お互い腰に手拭いを巻き付けて、風呂場に入る。 カノンは「ふぁぁ……!」と驚いていた。 どうやら、大きい風呂に驚いているらしい。 驚いた顔も可愛いな……。 桶にお湯を汲み、肩に掛け湯をする。 カノンも俺の真似をして、掛け湯をしている。 俺が湯船に入ると、ざっぱーんと湯船からお湯が溢れる。 これこれ、これがいいんだよね。 溢れだしたお湯にカノンは驚いていた。 「こんなにお湯が出ちゃって、なくなりませんか?」 「ははっ、なくならねぇよ。ほら、あそこからずっと流れてるから」 俺は木の入り口から絶え間なく出ているお湯を指差した。 鬼ヶ島は火山の島だ。 だから、そこかしこで温泉が涌き出ている。 その源泉を直接引いているため、お湯には困らない。 俺は肩まで浸かる。 ん?今日はやたらいい香りがするな……。 嗅いだことがある匂いだけど……何だっけ? カノンが湯船に入る。 白い肌が、桃色に染まっている。 「肩まで浸かるんだぞ」 「はい!」 カノンは湯船の中で膝を抱えて座った。 カノンの顔がだんだん赤くなっている。 気持ち良さそうに、ふにゃっとした顔をしている。 「気持ちいいか?」 「はい……なんだか溶けてしまいそうです……」 良かった。 癒されているみたいだ。 ここに来るまで、カノンはとても辛い思いをしてきたんだ。 こういう時間くらい、すべてを忘れてもいいよな。 俺はカノンの気持ち良さそうな顔を見つめていると、 「鬼八郎様……僕、好きです……」 と、カノンは呟いた。 「……え?」 ど、どういう意味だ!? 問1、カノンが省略した台詞の続きを次の内から選びなさい。 ①『鬼八郎様……僕、好きです……(鬼八郎様が)』 ②『鬼八郎様……僕、好きです……(お風呂が)』 願望としては、もちろん①一択だ。 けど、現実的なのは②だろう……。 くっそ、こういう時に俺の化身である黒八(くろはち)白八(しろはち)が出てきたら、熱い議論を戦わせるのに……。 『いや普通に考えて、②だろ』 俺の中の、黒い俺と白い俺がものの一秒で答えやがった。 っていうか、もう善悪関係ねぇじゃねえか!! くっそぉ……とイライラしていると、カノンが何やらうとうとしだした。 「おい……カノン、大丈夫か?」 カノンはだんだん沈んでいく。 おいおい、いくら風呂好きだからって、頭の先まで浸からなくてもって………… 「おおおおお!?カノン!?!?」 俺は慌てて、カノンを横抱きにして、湯船から出した。 え?のぼせた? そんなに浸かってたっけ?? 風呂場から出て、脱衣場の長椅子に横にならせる。 「カノン!?大丈夫か??おーい!!」 俺はカノンの耳元で呼び続けた。 カノンは「んぅぅ~」とうめきながら、とろんとした二色の瞳で俺を見た。 「あえ?きはひろぅしゃま……?おふろはぁ?」 何やら呂律が回っていないような……? それにあの香り……まさか……。 「もう出られたんですか?」 脱衣場の入り口に鬼一(きいち)が立っていた。 「風呂に入ったら、カノンがのぼせたんだよ!それに何か呂律が回ってないし……!」 鬼一は、少し考える素振りをすると、どこからか『大吟醸』と書かれた一升瓶を持ってきた。 「ふむ……やはり、一升瓶五本分は多すぎたか」 「は?」 「最近巷では、お酒を湯船にいれるのが流行っていると聞いて、やってみた。肌のキメが整ってスベスベになるらしい」 さらりと、そして堂々と、「俺がやりました」宣言をした。 「犯人はお前かーーー!」 俺が全身全霊でツッコミを入れると、カノンが俺の腰に抱きついた。 「きはひろぅしゃま……早く、おふろ入ろ?……背中流してあげまひゅ……」 とろんとした甘い声で、カノンは俺を誘ってきた。 俺、こんな子がそういうお店で働いてたら、毎晩通うわ。 俺はカノンの可愛さに下半身が元気になった。 「え、まだ、体洗ってなかったのか。きったな」 鬼一、その暴言、三分前に言ってたら殴り倒してたところだが、今は許してやる。 そして、一言だけ言わせてくれ。 鬼一、あっぱれだ。

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