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星空の誓い
〈カノン目線〉
僕は布団の上で目が覚めた。
あれ?宴会場にいたはずなのに……。
鬼八郎 様が運んでくれたのかな?
また、迷惑かけちゃった……。
鬼八郎様のお父様、すごく大きかったな。
でも、優しそうだった。
鬼八郎様は、お父様に似たんだな。きっと。
僕は、色々なことを布団の上で考えていると、開け放たれた障子の向こう側、窓のところから、ちょこっと赤い髪が見えた。
窓に近づいていくと、鬼八郎様は夜空を見ていた。
僕も空を見上げると、すごく綺麗な星たちがキラキラと輝いていた。
思わず、「わぁ……」と声を出してしまうくらいに。
その声に気付いたのか、鬼八郎様が窓の方を振り向いた。
「びっくりした……カノンか。起きたんだな」
「驚かせて、ごめんなさい」
僕は少し笑って謝った。
鬼八郎様は怒ってないこと、分かってるから。
「星、綺麗ですね」
「あぁ……」と鬼八郎様は夜空を見上げている。
あれ?何だか、元気がないような……。
「鬼八郎様?……何か、元気ないですか?」
「え?そんなこと……あるかも……」
「え!?」
いつも元気な鬼八郎様が、元気ないって……。
具合悪いのかな……?
それとも、何か気ががりなことがあったのかな……?
鬼八郎様は、僕を見て、何か言いたそうにしている。
もしかして、僕のことなのかな?
何かしてしまったのかもしれない。
「あの、カノン……」
「ごめんなさいっ!」
僕は急いで謝った。
何か、お父様の前でしてしまったのかもしれない。
宴会中に寝ちゃったから?
怒ってるかなぁ……?
「え?何で、カノンが謝るんだ?」
「だって……宴会中に寝ちゃったから……お父様、怒ってなかったですか?」
鬼八郎様は、一瞬きょとんとした顔をしていたが、すぐに笑顔になった。
「ははっ!そんなことで、怒らねぇよ。むしろ、『寝顔かわいいー!膝の上で寝かせたい!なでなでしたい!』ってうるさかったんだからな」
「ふふっ、面白いお父様ですね」
ここに来て、鬼って人間と変わらないのかもと思うようなった。
荒っぽい鬼もいるけど、鬼八郎様のように優しい鬼も多い。
「カノン」
鬼八郎様は、僕に話しかける。
真っ直ぐな瞳。
「カノンは、その、……元の世界に戻りたい?」
「人間界に、ですか……?」
鬼八郎様はゆっくり頷く。
「…………はい」
僕も頷いた。
ここは優しい鬼が多いし、とても救われている。
知らないこともいっぱいあって、それを一つ一つ覚えることは大変だけど、楽しくもある。
でも、やっぱり、元の世界が恋しい……。
「そっか……」
鬼八郎様は、笑顔で返事をしてくれた。
でも、何だかぎこちない。
「カノン」と、鬼八郎様は僕の両手を取った。
「今すぐは……帰してやれない……でも、必ず帰れるように手がかりを探す。約束する」
鬼八郎様は僕の両手をぐっと握る。
大きな手。
優しい手。
僕はこの手が大好き。
「カノン……それまで、帰るまでで良いから……俺の傍に、いてくれる……?」
鬼八郎様、震えてるの?
泣きそうな顔してる……。
いつもは、僕が泣いてるのを慰めてくれる。
強い、鬼八郎様なのに……。
僕は一旦、包まれた両手を解いてもらい、今度は僕が鬼八郎様の両手を包んだ。
僕の手じゃ、鬼八郎様の大きな両手を包みきれないけど。
「はい」
誓います。
僕は、あなたの傍にいます。
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