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第4話
本当は、あのまま拒否をしなければいけなかった。けれど、周囲に性癖がバレるのが怖かったのと、ほんの少しの恋心が冷静さを奪った。
それに、陽介には確信があった。
ーーーこの関係は長くは続かない。
せいぜい1年。長くても樹が卒業する位までだろうと、陽介は思った。
だから、大きな抵抗もせず、樹が望むままに体を繋げた。
学校でするのはさすがに嫌で、その代わりに部屋の合鍵を渡した。樹は飽きもせず、時間があれば陽介を抱きに来た。
樹はゲイというわけではなさそうだった。それなら、近隣の学校の女子からも好意を寄せられているのに、こんな年が15も離れた男の何がいいのか。可愛らしい顔立ちとは程遠く、切れ長の瞳に冷たい印象を与える顔立ちで、言葉遣いもどちらかというと乱暴だ。男に興味のない奴が脅してまで抱きたいと思うとは、どういうことか。
半年ほど経っても関係を求めてきた樹に、さすがに真意が分からず、陽介が疑問を投げ掛けると、鳩が豆鉄砲を食らったみたいに樹は驚いた顔をした。
「そんなの、好きだからに決まってるじゃないですか」
さも当然のように言われたが、陽介は信じられず、思いっきりしかめっ面をした。確かに、脅してきた割りには、丁寧に抱いてくるなとは思っていた。だが、一度も『好き』などの言葉は聞いたことがなかった。
陽介の表情から悟ったのか、それから、樹はことあるごとに「好き」と言うようになった。「はいはい」と適当に言いながら、陽介はその言葉を流した。自分に対して、全く興味も好意もないのだとはさすがに思わなくなったが、その言葉を信じる気はなかった。
それでも、自分が好意を持っている男から求められるのは嬉しくて、結局、卒業式の2日前まで関係が続いてしまった。
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