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第98話
俺たちは誰よりも一緒にいたがお互いを恋愛対象とは思ったことは一度たりともなかった。
お互い恋人ができようと胸が痛むことなんてなかった
ただそこまで近い友人でなく少し離れたところからの知り合い程度であれば俺は陽平に惚れていたかもしれない。
それだけ水無月 陽平という男は魅力的だ。
その後、宮内と黒岩両方の了承を得て変な感じの恋人同士となった。
陽平は二人を絡ませたりしながらそれを楽しんでいた。
そして結局二人と別れた。その後宮内と黒岩は二人で付き合うことになった。
「よかったの?お前は別れて」
「うん。二人が幸せならいいんじゃない?暫く遊ぶわ」
「あっそ」
「お前はどうなの?」
「ん~?相変わらずだよ。毎日会ってる」
「首のそれ、見えないとこにしてもらえよ。回りが気にするから」
首筋を指でトントン叩きながら陽平は笑う。
あぁ。…こいつはやっぱり綺麗だ
「俺が強請ったからね。これ嬉しいじゃん!名前書かれてるみたいで」
「そんなもん?ヤった奴におねだりされたことはあるけど。俺はつけてほしくねぇな。物みたい」
「そう?まぁ…そうね…お前はそうかもね」
不安なんだ…これがないと…一輝は教師となり隣町に赴任しているのだがあいつは人気教師だ。
若い上に教え方もうまくてわかりやすいしいつも柔らかく微笑んで誰にでも分け隔てなく接する。
外にデートに行ったとき何度か生徒に会ったこともあるが外では俺と一輝はただの元教え子と教師でしかなくて毎回一輝に向けられる視線に…俺を見る視線に胸が痛む…
一輝を解放してあげなきゃならないかな…きっと俺といる時間が長くて本当のところを見逃しているのかも知れない
俺に対する欲情も毎日見るのが俺だから仕方なく起こっているのかもしれない
そう思うと苦しくて必ず一輝の物っていう印を付けてもらうことが俺の日課となっていた
「なぁ。祥」
「ん?」
「…何か悩み?」
「いや。」
「今日久々一緒に帰ろう。部活ないし」
「いいよぉ」
「んなら放課後ね」
その日は一輝と付き合いだしてもうすぐ一年のことだった。
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