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第167話
「で本題なんだけどさ…みくちゃんうちでバイトしない?彼氏も一緒でいいし」
彼氏に見えるなら嬉しい…そんなこと美空には言えないけど…
「彼氏じゃないですよ。幼馴染みです」
そんなあっさり慌てたように言われると傷付く…
「そうなの?」
「俺とみそ…みくは幼稚園からずっと一緒の腐れ縁なんですよ」
「そうなんだね。それで、みくちゃんには新メニューを一緒に考えてほしくて」
美空は自分でも菓子は作る。美音さんの影響なのか女性視点で料理はしていると思う。
菓子に関してはこだわりもあるし好きなものも多いので美空のアイデアは役に立つだろう
「え?」
「あれだけ美味しそうに食べてくれるし目も肥えていそうだ。ここは見ての通り男ばかり。だから女の子の意見が欲しい。でも他のお客さんでは間違いが起こりかねない。ケーキが目当てでなくスタッフが目当ての子がほとんどだから。
だからちゃんとアドバイスしてくれそうな君にお願いしたい。男ばかりのところに女の子の一人いれるのもきっと幼馴染みとして心配だろうから君…あ…名前は?」
やっぱり…そういうことなんだ。
「睦月です。雪割 睦月」
「綺麗な名前だね。」
「ありがとうございます」
「睦月くんもみくちゃんの入るときだけでいいからどうかな?ちゃんと給料は出すよ」
美空が戸惑ってる。やりたくてたまらないんだろうな…こんなとこでバイト…でも…
「すいません…別のバイトをしているので…」
「そうか…残念…じゃあさ…第二水曜日に通ってくれない?」
「でも…それって店休日ですよね?」
「それも知ってくれてるんだ。ありがとう。
そう。店休日。でもねその日は新メニューをいつも考えてるんだ。だから俺と亀はここにいる。たまに、キッチンの子達もきてるけど。その時新メニュー出すから感想だけでも聞かせて欲しい。勿論お代はいらない。
…だめ?かな?」
ずっと女装しているとなるといつバレるかわからないけれど月に一度なら美空の好きなここにきても大丈夫じゃないかな?…
「みく。それならいいんじゃない?お前もここ好きだろ?」
「でも…私でいいんですか?」
「うん。君がいい。睦月くんもスイーツ好きそうだよね。君も一緒にどう?」
「こいつがやるなら…」
美空が安心して手伝い出来るのなら俺は力を貸す。
「じゃあ…お願いします」
「よかった。ありがとう。通ってるうちに気に入ってくれたならバイト登用もできるから教えてね。睦月くんはすぐにでも入って欲しいくらい。フロアに人が欲しくて。」
「さっきの…さなえさんはフロアには出ないんですか?」
「あぁ。さなえはね茜がフロアに出ることよく思ってないんだよ。さなえはあの容姿にも関わらず本人は全く自覚無いから結構トラブルに巻き込まれること多くてね…元々あいつは料理得意だし。あぁ。茜とさなえも君たちと同じ。幼馴染みなんだ。ちなみに君たちより年下だよ?葉月に聞いたけど高2なんだろ?あいつらは高1なんだ」
さっき会った二人は落ち着いていて雰囲気があって色気も半端なくて…まさか年下なんて思わなかったから驚いた
「えぇ!!二人とも大人っぽい…」
「だろ。俺も始めは驚いたよ」
「葉月先輩…」
「葉月知ってるの?睦月くん」
「えぇ。芙蓉 葉月先輩なら高校が同じなんです」
「そうか。今日はあいつは休み。葉月驚くだろうな。ここで睦月くんと会ったら」
「そうでしょうね」
「しかもみくちゃんと幼馴染みなんて知ったら葉月はショック受けるかもしれないな。葉月ずっとみくちゃんに会いたがってたし」
きっとみくを通して美空を見つけていたんだろう…
だから会いたいんだと思う
「え?そうなんですか?」
「怪我の心配してくれたんですかね?ありがたいですね」
美空が発した言葉に引き攣る…
「怪我?お前怪我してたの?」
そんなこと聞いてねぇ…
「え?あれ?言わなかったっけ?ナンパされた人に強く腕捕まれちゃって少し捻ったんだよね」
ナンパだと…?そんなの…聞いてねぇし…
「聞いてねぇ…」
「あはっ…ごめんごめん。」
軽く謝っているが何かあったらどうするつもりだったんだ…この…ばか…
「本当に付き合ってないの?」
「ないですよ」
「そう?お似合いだけどな」
「あははっ。みくには好きな人いますからね。俺なんて眼中にないんですよ」
「へぇ。こんなイケメン目の前にして他にいるんだぁ」
「俺なんかと比べ物にならないほどイケメンすよ。男の俺でも見惚れるくらい。優しくて頼りがいもあるし。ね?みく」
葉月先輩のことを思い浮かべながら言うと美空は頬を染める。
ほら…諦められる訳ないんだ…
苦しい…
「ははっ」
曖昧に笑い返す美空には葉月先輩を思う確かな恋情が見えていた
美空を家まで送る。途中電車のカーブに合わせて美空を抱き締める
あぁ…こんなにも好きなのに…お前は…誰かを思っているんだ…
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