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第171話

暫しの沈黙の後先輩が真剣な眼差しで俺を見つめ返してきた 「美空と付き合うことになった」 「はぁ」 「お前があいつのこと好きなのは結構前から知ってた…美空はお前にだけは心を許していることもわかってる。でも俺も美空のことが好きだ。気付いたのは昨日。これまでどうしてわかなかったのか…本当に…バカだと思う。だから…俺に美空を…」 「あんたは本当にバカですね。」 「んなっ…」 「早く気づけってずっと思ってましたよ。美空の気持ちだって。あいつは何度も何度もあんたを諦めようとした。それも知ってる」 「諦めようとした?」 「あなたはノンケだしモテる。だから美空は身を引こうとした。その度あんた自身が美空を引き留めてた。」 「引き留めてた?」 「…無意識って酷ですよね…まぁ…元々俺の思いは叶わないものだってわかってたから。月並みの言葉ですが美空の幸せが俺の幸せです。でもあんたがもし美空を傷つけようもんなら俺はどんな手を使ってでも美空を奪いにきますから。」 「…奪う…か。それは他でも言われたよ」 「それだけ美空はみんなに必要とされているんです。だから大切にしてやってください。美空が全力で甘えられるように。今のところまだ美空は俺にしか甘えられないですから気ぃ抜けませんよ」 「お前には渡さない。美空を傷つけるつもりも手放すつもりもない。だから…安心して?」 「何ですか…それ。偉そう…」 「彼氏は俺だからね」 「美空を…よろしくお願いします」 この人は非の打ち所が無いほどできた人間。美空の相手には申し分ない。 それに…あんなにも美空を思いながら愛おしそうに目を細めていた。 だから…あなたに託します…美空を…幸せにして下さい…

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