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第176話
名前を呼ばれた美空は俺の胸に顔を埋め肩を震わせている
「…」
「先輩がお前と連絡とれないって心配して俺に連絡くれたんだ。だから俺はここにきた」
「美空…」
これまで聞いたことのない暗く沈んだ声にもう一度布団を被った美空。
ここからは二人で話す事。俺は帰ることにした
「俺は行くけど」
「や!!睦月行かないで」
布団から出て美空が思ったより強い力で俺を引く
「うわっ…」
勢いが有りすぎて美空を押し倒した形になっている。
視覚的にヤバい…泣く美空は恐ろしく可愛い。震える唇を奪い取り侵したい…そんな想いが沸々と沸いてくるが必死に耐える。
少しだけ緩んだ美空の腕から逃れ振り返る。先輩がとても怒ったように困ったようにこちらを見ていた
「美空。離して…先輩がすごく怖い顔でこっち見てるから。」
「いや!!いやだ!!」
それでも首を振り俺の体に腕を巻き付けいやいやと首を降る美空。
その姿に先輩は目を潤ませ唇を噛む。
「…わかった…俺…帰る…ごめん…」
先輩の声が震えているのがわかる。ゆっくりとドアを開けこちらに背を向け部屋を出ていってしまった
パタン…ゆっくりと部屋のドアが閉まるのをただ見つめていた
「ばか!美空。お前何やってんだよ」
「だって…まだ別れるって言われる準備できてない」
「まだそんなこと言ってるのか?お前は見てなかっただろうけど先輩かなり傷ついた顔してたぞ」
「どうして…!!どうして先輩が傷つくのさ!!先に俺を捨てたのは先輩なのに!!俺より女の人選んだのに!!」
「はぁ!?そんなことあるわけ…」
「あるもん!俺と先に約束してたのに…久しぶりに会えるはずだったのに俺との約束よりその人優先にしたもん!!だから俺のことなんか…一時の気の迷いだったんだもん…」
それを聞き頭に血が昇る。あんただから俺は美空を託したのに何だよ…ふざけるな…あまりの怒りに美空を振り払い走り出す。一発殴ってやらなきゃ気がすまない
「睦月!!」
「うるさい!!」
美空が呼ぶけど冷静になれず部屋を飛び出した
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