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第7話 異性間の友情は脆い

 次の日、熱が下がった俺は無事に登校した。でも今日一限目から化学だよ。とてもじゃないけど南條先生と顔合わせられないよ……! 「うっちゃんおはよう、昨日大丈夫だった?熱出たって言ってたけど……」 「あ、りっちゃんおはよう。うん、もう下がったから大丈夫」  まさか知恵熱だったとは恥ずかしくて言えない。 「……うっちゃん、どうしたの?」 「えっ?」  りっちゃんがじいっと俺を見つめてきた。まだ何も言ってないのに、俺が南條先生に告白されたことがもうバレたのか!?いや、そんなはずはない!! 「何かいつもと違う……。悩みでもあるの?」 「へぁ!?そ、そんな悩みごとなんてあるわけねーっしょ、お気楽腐男子の俺が恋愛ごとで悩みとかああありえないし!?他人の恋愛には興味津津だけどただし男同士限定、そんな俺が自分の恋愛のことでしかも南條先生が告白してきたから悩むとかあああああああ!!」  何全部素直にゲロってんだよ俺ぇ!!!普通に心配されてるだけなのにテンパりすぎだろぉぉ!!  ううっ、りっちゃんの瞳がキラッキラしてるよォ―――!!きっと何も知らない男子が今のりっちゃんを見たらあまりの可愛さに100%の確率で惚れてしまう!! 「大丈夫だよ、うっちゃん。大丈夫だから!」 「へ?」  りっちゃん……姉さんたちみたいにからかったりしないのか?さすが親友!性別を超えた友情って素晴らしい!! 「南條先生、きっと初めてのときは優しくしてくれるよ!!」 うああああああ―――!!!! (沈)  ……南條先生は、いつもと変わらなかった。  いつものように無表情で――というより仏頂面で、眉間に寄った皺すらもかっこいい。そして思わず耳が妊娠してしまいそうなイケヴォイス。俺男だけど。  そう、目を閉じればまるで桃源郷……。 『雨宮、可愛い……好きだぁぁっ!』  あああああああ!!ダメだ、目を瞑ったら一昨日のことを鮮明に思い出してしまう!! 「んーじゃあこの問題を、」  頼むから俺に当てないでください!今は化学式なんて考えられそうにない!! 「今日こそ解けるか?吉村」  ほっ……  今日も南條先生×吉村くんの神カプが拝めるとか俺、ラッキーかよ。美形な二人を並べて見つめて少しだけ心を落ちつけよう……。 「南條先生、僕には無理です!今日も解けません。雨宮君に当ててください!」 「へぁっ!?」  ちょ、ちょ、ちょ、ちょいちょいちょい―――!!!? 「仕方ないな、雨宮にはこの前やってもらったから……じゃあ、池田」 「ひゃいっ!?」  俺の後ろの席のりっちゃんが当てられた――!俺がそっと後ろを振り向くと、りっちゃんに助けを求めるような目で見つめられた。  ごめんりっちゃん、今の俺は何の役にも立てない……頭が働かないんだ……。  俺はふるふると首を横に振った。 「わ……私もわかりません……」 「そうか。じゃあ、分かる奴は?」  誰も手を挙げなかった。もちろん、俺も。なんとなく南條先生の視線を感じたけど、目が合わないように俯いていたから指名されることはなかった。結局、その問題は南條先生が解説しながら自分で解いた。  そして授業が終わり、りっちゃんと化学室を出ようとしたら…… 「雨宮、ちょっといいか」  南條先生に呼びとめられた。先生は授業中みたいに仏頂面じゃなくて、すごく俺を心配しているような表情をしていて……思わず心臓がドキンと跳ねた。  な、何だ?今のドキンって。  いや、南條先生に名前を呼ばれたら誰だってドキッとするよな。そうに決まってる。 「その、頭はもう大丈夫か?昨日は熱を出したんだって?担任の遠藤先生に聞いたよ」  頭大丈夫か?って、捉え方によってはディスられているように聞こえるから不思議だ。ディスられてるんじゃないってことは南條先生の顔を見れば一発で分かるけど。  でも、やっぱり俺は俯いてしまう。せっかく間近で南條先生のイケフェイスを堂々と拝めるチャンスなのに、どうしても目を合わせられない。 「ご心配をおかけしてすみません」 「いや、いいんだ。その、一昨日はすまなかったな……」 「………」  南條先生、いったいどれがすまなかったの?  キスしたこと?  抱きしめたこと?  ……俺に、「好きだ」って言ったこと?  ていうか、横でりっちゃんが超聞いてるんですけどぉぉ!? 「あー……その、アレだ。今日も昼休みに準備室にコーヒー飲みにこないか?」 「いや、あの」  断らなきゃ。南條先生には悪いけど、俺にはそんなつもりはないって。好きだなんて言われて、正直困ってるって……。 「勿論(もっちろん)行きます!南條先生、私が責任を持って雨宮君を行かせますから!!」 「はいぃぃ!?」  り、り、りっちゃん―――!!?なんでぇ!?俺が嫌がってるの分かってるはずなのに!!異性間の友情って儚いなおいぃぃ!!!  りっちゃんに裏切られた……(しくしく)

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