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第17話 父からのありがたいアドバイス

  「ま、まあ卯月が不良になる気はなくてもね?いじめられたせいで心を病んで引きこもりになったりしたら卯月の将来が……」  腐女子たちの勢いにはさすがの父もタジタジだ。でもかわいい俺のために負けないで!お父さん!! 「それなら大丈夫よ、もう嫁の貰い手決まってるから」  ――は?よめ?  ちょっと待って何の話。ていうかその嫁ってもしかしなくても俺のこと!?   「よ、嫁だって……!?」 「もし引きこもりになったとしても南條先生に引き取ってもらいましょ!」 「「「さんせー!」」」 「ちょちょちょ、ちょっとぉぉ!?」  何勝手に引きこもりに設定した上に嫁ぎ先まで確定してくれてんだ!!しかも全員賛成とかヒドイ!!更正する余地をくれよぉ!!ていうか嫁行かねぇし!!行けねぇし!!  ――すると。 「卯月……嫁に行くって本当かい……?」 「へっ?」 「そんなの、お父さんはぜったいに許さないぞ!!卯月は……卯月だけはっ、ずっとお父さんの側にいるんだァァ―――!!」  ガバっと俺に抱きついてオイオイ泣きだした父。ちょっとお父さん、俺は娘じゃありませんよ!?一応性別:娘が3人もいるのに、何で息子の俺が一番娘みたいなポジションなんだよ!?しかもまだ17だから嫁に行ける年齢じゃねぇし!!男が結婚できるのは18歳から!!  ってか嫁行かねぇから!!何度も言わすな!! * 「――卯月の高校の化学の先生が、卯月のことを好きだって……?」  なんとか父を落ち着かせて、母が簡単に俺が姉たちにイジメられた経緯や南條先生のことを説明した。ていうか簡単に説明していいのか?息子が男の先生に告白されたとか超デリケートな話題じゃね?普通のご家庭じゃ考えられませんね。 「そうなのよぉ~、でも卯月ったら自分もその先生のことが大好きなくせに、全然自分の気持ちを認めないのよねぇ。だからお姉ちゃんたちと説得してたの」 「そういうことよ」 「だーかーらー、俺は別に好きじゃないって!!さっきからそう言ってるのに姉さんたちがしつこいんだよ!!」  俺は父の袖を引っ張って必死に訴えた。父は俺のこのキャワイイ仕草に弱いから、きっと味方になってくれるはず!!これ以上誤解する人が増えるのは勘弁だ。 「アンタがいつまでも自分の気持ちを認めないからでしょ!」 「お前の態度が『好き』からくるものじゃなかったらこの世に愛なんて存在しないぞ!」  そこまで言う!? 「と……とりあえず、お姉ちゃんたちも卯月も双方落ち着こう」  父は俺の頭をわしゃわしゃと撫でくりまわしながら俺と姉たちを諌めた。高校生の息子にここまでデレる親父も珍しいよな……と思いつつ、されるがままの俺。  そして父は、優しい瞳で俺を見つめながら諭すように言った。 「卯月、憧れが好きに変わるのはそう珍しいことじゃないよ。お姉ちゃんたちがここまで言うのなら、卯月もほんの少しはその先生を好きっていう気持ちがあるんじゃないかな?……お父さんとしてはとても面白くないけどね」  なんだか初めて真面目に相談に乗ってもらえた気がして嬉しくて、俺も素直な気持ちを父に吐露した。 「あのね……南條先生は俺が今まで見たことないくらいイケメンだから、話してると目も見れないくらいドキドキするんだ。でも俺、先生のことは攻めって視点で見てるから……腐男子的なね。先生と他の男子が絡んでるところを見てる方が幸せなんだよね。これって好きとは違う感情でしょう?」 「………」 「ね?」  お父さん、なんで黙るの……?  怪訝に思った俺は父の顔を斜め下から覗き込んだ。すると父は「クッ……!」と言いながら目頭を押さえた。え、なんなのその反応は。まさか……! 「娘を嫁に出す時の心境ってこんな感じなのか……」 「おいぃぃぃぃぃ!!」  振りだしに戻ってんじゃねーかオヤジィィィ―――!!ていうか嫁には行かないって何回脳内で突っ込ませるんだよ!!!  そしてここぞとばかりに畳み掛ける姉たち。 「ね~?お父さん、無自覚なのよこの子!ほんと聞いてて苛々する!」 「とっとと気持ちを自覚して南條先生を家に連れて来いって言ってんのに!僕もイケメン教師がナマで見たい!!」  ぐぬぬぬ……!! 「まあまあお姉ちゃんたち、卯月が自覚してないならそれはそれで青春ぽくて可愛いじゃないか、そんなせっつかなくても」 「ええ―――」  父は、俺の肩をポンと叩いた。 「お姉ちゃんたちはああ言ってるけどね、恋は焦らなくていいんだよ卯月。とりあえず、自分なりにそのナントカ先生と向きあうところから始めてみたらどうかな。先生は卯月に好意を示してくれていて、卯月はそれが心底嫌だってわけじゃあないんだろう?それに色々経験しておいた方が、後々きっといい漫画が描けると思うんだ」 「いい漫画?」 「卯月は同人作家の端くれだろう?自身がリアルDKで、憧れの先生が攻めモデルとして身近に……しかも自分に好意を寄せているんだから、生きた資料としては最高じゃないか。この経験を漫画に生かさなくてどうするんだい?……それに、不本意かもしれないけど受け側の気持ちも経験もできるわけだし」 「………」  父の言葉は、姉達と違って何故かストーンと俺の中に落ちてきた。  そっか……何事も経験っていうか、嘆いているばかりじゃなくてこの状況を少し前向きに捉えてみるって手もあるのか。BL漫画の資料として……。 「……さすがBL雑誌の敏腕編集者」 「父親としてアドバイスするのは嫌なのよ……まったく、卯月にばっかり激甘なんだから」 「リアルで受け経験しろとかって、一番エグイこと言ってるけどな」  つまり、逆境を楽しめってことだな!  お父さんのアドバイスのおかげでちょっと光が見えてきた気がする!

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