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第19話 みんなでレッツゴー!

「うっちゃんは毎日化学準備室でお昼ご飯食べるって昨日約束したでしょう?」 「そんな約束した覚えはございませんが」 昼休み、いつものようにみんなでお弁当を食べようと美術室に来たものの……美術室にすら入れてもらえないって何だ?イジメ!? ドアの前にはあいちんとかなやんが立ちはだかり、俺の入室を阻止している。俺と一緒に美術室へやってきたりっちゃんでさえ、あいちん達側へ移動した。 う、うらぎりものぉ……!! 「だって南條先生が待ってるよ?」 「二人っきりだと緊張するんだよ!それなら3人とも一緒に来てみんなで食べようよ!」 「えぇ~?南條先生って女子には異常に冷たいから絶対やだー」 「「同意」」 ううっ……まあ、確かにそうだけど! 「じゃ、じゃあ永田氏!中にいるんだろ!?俺と一緒に化学準備室でご飯食べようよ、ねえぇ!」 ドアの向こうに向かって叫んでみた。すると、美術室の中から辛辣な返事が返ってきた。 「そんな野暮な真似はしたくないでござる。往生際が悪いでござるよ、雨宮氏」 「野暮じゃない!野暮じゃないからぁぁ!」 学校にも俺の味方はいないのかよぉぉぉ!! すると、そんな往生際が悪い(自分で言いたくはないけど)俺に対し、りっちゃんが腰に手を当てて溜め息をついた。 「しょーがないなぁ……じゃあ、入口まで送ってってあげる」 「え?」 いきなり両腕をあいちんとかなやんにガッチリと組むように掴まれた。 「化学準備室へしゅっぱーつ!」 「うえぇぇぇぇ」 りっちゃんを先頭にして、ズルズルと引きずられていく俺。完全にドナドナじゃん! せめて進行方向を向かせてぇ!!後ろ向き歩きにくいよぉ!! 「チッ、またアイツかよ」 「ケッ、調子に乗ってんじゃねぇぞ」 また見知らぬ男子になんか言われたし……!くやしかったらお前らもモテてみろよ!!これがモテてるように見えてるんならなぁぁぁ!! * 「……南條先生、いますか?」 化学準備室の前に着くと、ドアをノックしながらりっちゃんが遠慮深げに南條先生を呼んだ。すると無言でドアが開けられ、そこには少し驚いた顔の南條先生がいた。 ああ、今日もイケメンですぅ南條先生……! 「池田と深町と大月……?雨宮!」 「こ、こんにちは」 南條先生は、俺の名前呼ぶ時だけあからさまに態度が違った。だからそんな餌を腐女子に撒いたらダメなんだってば!! 「雨宮君を引き渡しに来ました」 「では我々はこれにて失礼します」 「うっちゃん、また後でね!」 呆気に取られている南條先生の返事を待たずに、りっちゃん達は俺を残してその場から立ち去った。イベントで鍛えた足、速過ぎだろ! 化学準備室前に一人残された俺……。りっちゃん達、まじで送ってくれただけだったな。 「何で今日は池田達と一緒に来たんだ?一人で来るのが恐かったのか?」 「い、いや、そのぉ……」 怪訝な顔で聞かれた。まあその、ぶっちゃけ行きたくなかったというか……南條先生が嫌なんじゃなくて、やっぱりまだ二人きりは緊張するからなんだけど! 「……とりあえず、中に入れよ」 「は、はいっ」 南條先生は俺を招き入れるとドアを閉めた。そして、今日は正面から俺をギュッと抱きしめた。 「えぁっ……!」 不意にドクンと胸が高鳴った。でもこれは相手が南條先生だからじゃなくて、イケメンに抱きしめられたからだ……と思いたい。 そして俺も南條先生の背中に手を回したいような衝動に駆られたけど、きっと気のせいだ。手の行き場が無いからそう思っただけだ! 「なあ雨宮。ずっと気になってたんだけど、お前なんでいつも池田達と一緒にいるんだ?男子よりも女子といる方が気が楽なのか?」 「えっ?りっちゃ……い、池田さんは中学からの親友ですし、ほかの2人は高校からの付き合いですけど……まあ、そうですね……」 だってクラスの男子は俺を遠巻きにして近づいてこないし。俺もりっちゃんと話してる方が楽しいし。ちなみにりっちゃんには女友達がちゃんとクラスにもいるよ。ずっと俺と二人だけでつるんでるわけでもないのだ。 「ふうん。あいつらのいずれかが実は彼女……なんてことは無いよな?」 「えぇえぇ!?それは絶対に無いです、まず俺がそんな風に見られてませんから!!」 俺は南條先生から身体を離すと全否定した。思わず目が合ってしまったので、サッと下を向いた。あぶないあぶない……。 「そうか……じゃあ、何で仲がいいんだ?」 「え、えっと……」 彼女達は腐女子という生物であって、俺も腐男子という生物であって、要するにホモを愛でる特殊な趣味嗜好の仲間なのですと説明したいけど南條先生には理解不能だろうなぁ……。 「何か共通の趣味でもあるのか?」 「あ、ハイ!みんな美術部なんです」 「なるほどな、部活仲間か」 嘘は言ってないよな。なるほど最初からそう言えばよかった。 安心したのも束の間……何故かいきなり顎クイをされて、思いっきり顔を覗きこまれた。 「うはっ!?」 「雨宮、また顔が赤いぞ」 「せ、先生の顔が近いからですぅ……」 目は、目だけは合わせないぞ、俺!目を合わせたら直ちに鼻血を噴く!! 「ああ、そういえば俺は雨宮のアイドル的存在だったな」 「ほぇっ」 不意に柔らかいものが頬に触れて、キスをされたのだと分かった。俺の顔はますますマンガのように茹でダコになる。 「や、やめてくださいっ!もももっ、勿体ないですから!」 「何がだ?」 「え……っ、南條先生の、キスが」 「ふ~ん」 南條先生はあやしげにニヤリと笑うと、ガッと俺の頭を固定してきた。 なになになにっ!?なにされるの!?

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