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第20話 紳士とはなんぞや
ちなみに俺、頭を固定された時点で既に目瞑ってます……だってイケメンのドアップとか見たら鼻血噴くし!!だから決してキス待ち顔とかそういうのじゃねーから!!
「勿体ない、か。それなら、出血大サービスしてやるよ」
「えっ?」
その言葉に思わず薄く目を開けると――ちなみにこの時の俺の顔は超ブサイク極まりないだろう――南條先生のご尊顔が超至近距離にあって思わず昇天しそうになった。けどそんな隙を与えられる間もなく、頭をぐっと引き寄せられて――
「ンッ……!」
下唇を食まれたと思ったら、南條先生はそのまま俺にまた濃厚な大人のキスをぶちかましてきたのだった。
「ンッ!はっ、ぅ……ん」
ちょっ、ちょっと待って……なんで俺、またされるがままになってんだよ!!抵抗しなきゃ、抵抗!抵抗!ていこう……
しなきゃなのに……
なんで?指先に力、入らない……。
だってなんか、昨日よりももっと先生のキスが、キモチイイって感じてる。
「は、んっ……せんせぇ……」
「……エロい顔、」
俺は結局また、自分から舌を差し出して絡ませていた。されるがままなのは変わらないんだけど、南條先生の動きをなぞるように自分でもキスを返していた。ヌルヌルでグチャグチャな口の中が気持ちいいと感じる。
ああ、俺って快楽に弱かったのかぁ……なんとなく気付いてたけど……。
最後にペロッと唇を舐められて、先生の顔が離れていく。
「……雨宮、目開けて」
「む、むりです」
「じゃあまた、昨日みたいに勃つまでキスするけど?」
それはダメ―――ッッ!!慌てて目を開いたそこには……やはり超絶イケメン、通常運転の南條先生がいた。
「やっとまともに俺の顔見たな?」
「っ……!」
「授業中はあんなに無遠慮に……ずーっと俺の顔見てる癖に」
ば、ばれてたのか!恥ずかしっ!!
「今日は昨日みたいなことはシないから安心しろよ。お前が俺のことを好きだって認めるまで、なるべく紳士的な態度で接して行こうって決めたから」
「す、好きじゃないですってば」
もう限界……俺の鼻の毛細血管が限界!!
俺は横を向いて南條先生から目線を逸らした。ああ、やっぱり今日も俺の気持ちは伝わらないんだろうか。ていうかいきなり抱きしめたりキスしたりするのって紳士的なのか!?
紳士的のボーダーラインがわからないよぉ……。
「……なぁ雨宮、まずはその説得力のなさ、どうにかならないか?」
「えっ?」
「そんな顔で好きじゃないって言われてもな、好きですって言われてるようにしか聞こえないんだよ」
………!?
そういえば、昨日きさ姉にも似たようなことを言われたな……俺の態度が好きからくるものじゃなけりゃ、この世に愛は存在しないとか………
って、そんなわけねぇから!!
「つ、都合のいい耳ですね!」
「おっ、今日はちょっと言うじゃないか」
「少しだけ耐性が付いてきましたから……!」
さすがにキスもハグも三回目になるとな!でも、まだマトモに顔も見れないんだからただの強がりだけど。
ああもう!南條先生のこと近くで観察して攻めの資料にするって決めたのに!ていうか、ノンフィクション描くんだっけ!?
……………
無理じゃね?
「まあ耐性をつけてもらわないとこっちも困るからな。これ以上先の段階に進めにくい」
「はい?」
「それより雨宮、弁当食うんだろ?おいで」
「………」
南條先生は、三日目にしてすっかり俺の定位置になった場所の椅子を引いてくれた。紳士的って、こういうことなのかな……?
俺がもそもそと弁当を食べてるのを飽きもせずにじっと見ている南條先生。
なんでそんなに見るんだろう……授業中にめっちゃ先生を見てたことがバレた今、俺に文句を言う筋合いはないんだけど。
ちらっと目線をあげると、バッチリ目が合ってしまったので慌てて顔を伏せた。俺の行動に、南條先生が声を出さずに肩で笑っているのが気配で分かる。
も、もうとっとと食べてコーヒー飲んで教室に帰ろう……!
「なぁ、雨宮」
「はい?」
「何がそんなに不安なんだ?俺と付き合うことに関して」
「何が、って……」
何がって何が?ていうかまず付き合うことになってないですから!俺は一度もOKした覚えはないですからぁぁっ!!
「男同士だし、その上教師と生徒だし、おおっぴらに付き合うわけにはいかないけど……でも俺は、それ以上にお前のことを幸せにできる自信はあるけどな」
「!?」
な、なんてこと言うんだ、南條先生……いや、このイケメン……!今の台詞はぜひ漫画でも使わせてもらおう。
「そこそこ金もあるし、女なんかよりよっぽどお前のことを気持ちよくできるテクもある。もちろん、愛もな。――だからさっさと俺のこと好きだって認めろよ、雨宮」
「!?」
紳士的な態度とやらは、どこに行ったんだ!?それともコレが南條先生流の紳士的態度?いやいや……こんな強引な紳士見たことね―よ!!杉下右○さんみたいな人のことだよね!?紳士っていうのは!!
「そ、そもそも俺には付き合う気すらありませんからね!?俺、別に先生のこと好きじゃないですって何回も言ってますよね……!?」
「でもそうは見えないんだって。なんでそんなに頑 ななんだ?」
「かっ、頑なだなんて……!」
思わず顔を上げると、また先生とバッチリ目が合ってしまった。俺って学習しない!!
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