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第26話 荒れる卯月と皐月さん
家に帰ってからも、俺は荒れ続けていた。
「あら?お弁当全部食べてないじゃないの。どうしたのうっちゃん、お腹でも壊した?」
「そんなとこ!」
中身の残ったお弁当箱を出したら、案の定お母さんに心配された。するとお母さんはハッとした顔をして、
「もしかして南條先生に中……」
「されてねぇよっ!!言わせねーからな!!」
学校でも家でも腐女子(貴腐人)ゆるぎねぇな~!!母が何て言おうとしたのかはプロ腐女子の皆様はお分かりでしょうが、自主規制します!!
「冗談よ……ていうか今日はやけにカリカリしてるのねうっちゃん、遅くきた反抗期?」
「知らない!晩御飯もいらないから!」
俺はドスドスと激しく足音を立てながら階段を上がり、自分の部屋へと引きこもった。
よく考えたら、お母さんにこんな反抗的な態度取ったの、初めてかも……。自分が覚えている限り親に反抗したことはないから、遅い反抗期だと思われても仕方ない。
なんだか八つ当たりしてるみたいで自分でも嫌だけど、どうしようもない。
すると。
「コラぁああ卯月ィィィ!!」
いきなり俺の部屋のドアを蹴破り、そのままの勢いで俺のうずくまるベッドに膝からダイブしてきたのは、二女の皐月姉さんだった。
「ひでぶっっ!」
み、みぞおちにモロに入ったぁぁ……!!
「い、いきなりなにしゅるんだよぉ……っ!?俺を殺す気なのぉっ……!?」
大袈裟じゃなく痛い!涙が出てきたし!!せっかく学校で関口くんに殴られるのは免れたのに、自宅で実の姉にやられるとは……!!
「リビングにいるお姉様にただいまの挨拶もなしに部屋に引きこもるなんて、いい度胸ね~~!」
「それだけかよぉぉ!?」
心が狭すぎる!!そう思って叫んだ俺を、皐月姉さんはキッと睨みつけた。
「それとさっきのお母さんに対する態度は何なのよ!!謝ってきなさい!!」
「うっ!」
今日はよく腐女子に怒られる日だ……。でもここは学校じゃないし、相手は友達でもないから俺も言い返すよ!!(普段は恐くて言い返せないけど!)
「知らねぇよ!!お母さんが多感な時期の息子に卑猥な冗談を言おうとしたのが悪いんだよッ!!」
「そんなの今更でしょ!」
「うぐっ」
冷静に言われると反論できない……!やはり17歳が22歳に勝つことは無理なのか!?なんか今度は悔しくて涙出てきたし……。
「ウザッ、何泣いてんのよ!泣きたいのは反抗されたお母さんの方だっつーの!!」
「皐月姉ちゃんの方が高校生の時お母さんに反抗しまくりで毎日泣かせまくってたくせにィィ!!」
「若気の至りってヤツよ!」
「何で俺は至っちゃいけないんだよ!?」
「苛々するからよ!!」
「理不尽んんん!!」
俺がそう泣き叫んだ時、ガチャッと再びドアが開いた。
「おい二人とも、声がデカくて近所迷惑だってお母さんが……」
「きさ姉ちゃぁぁぁん!!」
俺の部屋に現れたのは、専門学校から帰ってきたばかりのきさ姉 だった。俺は思わず一番年が近くて仲良しのきさ姉に飛びついた。ちなみに身長は俺の方が負けてます。
「ちょっと如月!卯月をこっちに寄越しなさいよ、根性鍛えなおしてやるわ」
皐月姉さんは俺のベッドにどかっと座り、足を組んでいる。ここだけの話、皐月姉さんは恐い系の元ギャル腐女子です。(今はオシャレなショップ店員に擬態してるけど)
「きさ姉助けてぇ!ピン子が恐ぇ~っ!」
「誰がピン子だコラぁぁ!!」
「いったい何が原因のケンカなんだ?卯月が大声出してるなんて珍しいじゃないか」
俺はきさ姉の後ろに隠れて、皐月姉さんに対してべーっと舌を出した。皐月姉さんもきさ姉が大好きなので、盾にすれば攻撃してこない。
「このクソガキ、後でシメてやる!……帰ってくるなり苛々してて、お母さんに八つ当たりしてたからそれを私が怒ったのよ!」
「ふうん。どうしたんだ?卯月」
「皐月姉さんには絶対 言わない!!」
「あーっマジで生意気!!もう一発ぶちかましてやろうか!!」
「まっ、負けるもんかぁぁ……!!」
俺と皐月姉さんの間に挟まれたきさ姉はハァーっと大きな溜め息をついて、
「……卯月、今夜は僕と二人でファミレスで飯食おっか」
と言った。
「えっ?」
「おかーさーん!今日は僕と卯月、晩御飯いらなーい!作ってたら明日の朝食べるからー!」
今度は階段の下に向かってそう声をかける。
下からお母さんの「えーっ」という声が聞こえてきた。
「ホラ、早く準備しろ。それとも制服のままで行くのか?」
「……着替えるよ。皐月姉さんもきさ姉も早く出てって!」
「はいはい」
「ふんっ」
皐月姉さんは、出て行く際に俺の額に思いっきりデコピンしてきた。
「痛ってぇなもぉぉ……」
今まで親には殴られたことないけど、姉には殴られている俺です。
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