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第37話 その頃の南條先生について②

その後、当然といえば当然だが卯月は化学準備室にぱったりと来なくなった。吉村が勉強していることをクラスでアピールしているのか、来づらいのだろう。 俺が会いに行ってもいいのだが、俺が2Aの教室に行くってどうしても不自然になるからな……。 せめて放課後、捕まえられたら。 つーか授業終わったあとに声かけりゃいいんだけど、俺があんなことを言ったせいで吉村は張り切って俺に質問してくるようになった。だから、卯月に話しかける隙がまるで無い。 もーほんとになんなんだよコイツは!!勉強なんて教科書相手に一人でやってろよばかぁぁぁ!なんて言えない……教師はつらいぜ。 だがそんな想いを募らせている俺に、信じられない奇跡が起きたのだ!! 「……あ、あ、あ、あまみやっ……!?」 ある日の放課後、吉村の勉強を見終わった帰り。叔父から50万ほどで譲り受けた愛車のフィアットにもたれかかるようにして、卯月が眠っていたのだ。 何だこれ……マジで天使か!?眠ってるところなんて初めて見たぞ!!(いつか俺の隣で裸で眠っているのを見る予定だったが) か、かかかか、可愛すぎじゃねーかうおおおおおい!!!このまま家に連れ込んで抱き潰したいぃぃーーー!!!!! そんな欲求が俺の脳を支配しかけたが、寸でのところで理性が俺を留まらせた。いかんいかん、顔を近づけただけで鼻血を噴くようなヤツだった!勢いにまかせてチンコいじったりしたけど、やっぱり泣かせたし!これ以上何かやったら、嫌われる……かもしれない。そういう判断をしたのだ。 でも、このまま起こして家に送るだけじゃ何とももったいないぞー!! そうだ、大体卯月がここにいるということは俺に会いに来たんじゃないか!俺も会いたかったけど、こいつも俺に会いたいって思っててくれたんだな……!! もうそれだけで胸がジーンとして、涙が出そうだった。俺のことは好きじゃないだの付き合う気はないだの言ってたけど、やっぱり俺のことが大好きなんじゃねぇかよ……!!これが俗に言うツンデレってやつかぁぁぁ!! ああ可愛い、もう絶対に手放さない、卯月。 そして俺はそおっと卯月を抱き上げると、愛車の助手席に乗せてシートベルトを締めた。 どさくさに紛れて、白い頬やまぶたにキスの雨を降らす。端からみたら完全に犯罪者、いや変質者だが気にしない。 さーて俺の家(マイハウス)に連れ込むぞーっと!!ちょっと寝かせてやるだけだ!襲わねえよ!多分な!俺の理性が持つ限りは!! エンジンをかけて普通に車を走らせても、卯月は全然目を覚まさない。よくこんな寝室でもない場所でそんなに爆睡できるな……神経質な俺には土台無理だ。 まぁ、そんなおおらかなところも卯月のいいところなんだろう。でも簡単に誘拐とかされそうで先生は心配だ……(※現在進行中) それより今、俺の愛車の助手席に高校生の恋人(仮)が乗って居眠りをしてるという事実!ああ、なんて悪い大人の気分なんだ!!(※そのものです) 「ン……」 卯月が起きたらしい。もうちょっと寝顔を見ていたかったが……残念。 「!!?な……南條先生!?」 ふふふ、驚いてる驚いてる。寝起きのリアクションも可愛いな、卯月。 「すごい気持ちよさそうに眠ってたから、起こさずに乗せたんだ。俺を待ってたんだろ?」 何でもなさそうな顔でそう言ったら、卯月は顔をカーッと赤くした。相変わらず分かりやすくて可愛い。これだけ好かれてると調子に乗るのも仕方ないと思う。 「あ……はい。あ、あの……今どちらに向かってるんですか?」 「とりあえず俺の家。ゆっくり寝かせてやろうかなって思って……でも起きたらちゃんと家まで送ろうって思ってたからな!寝込みを襲うとか、俺はそこまでクズな大人じゃないからな!」 あ、ヤベッ!口に出すイコール本音のフラグじゃねぇか! 「わ、わかってますよそんなこと」 気付いてない……なんて純粋なんだ、卯月。本当に誘拐されそうで俺、心配だぞ!! 「最近吉村のヤツがえらく張り切って質問に来てたから、全然雨宮に会えなくて俺から会いに行こうかなって思ってたんだよ。だからお前が車の横に居たときは嬉しかった」 「……!」 正直な気持ちを伝えると、また卯月はぶわっと花が咲いたみたいに赤くなり、嬉し恥ずかしそうに俯いた。ああ~可愛いなぁ~……! 俺は上機嫌でハンドルを華麗に操る。運転は嫌いじゃないんだ。すると突然、鼻息を荒くして卯月が言った。 「あ……あの!俺、南條先生に言いたいことがあったんです!」 な、何だ!?この流れは、もしかして……もしかしなくても告白か!?!?うわ、ちょっと待てちょっと待て!!運転中だと抱きしめられないだろうが!! 俺は動揺を悟られないように深呼吸をすると、 「その話、俺の家に着いてからにしてくれるか?」 と無駄にキリっとした顔で言った。それでも卯月は「そんなにたいしたことじゃないんですけど」としつこく食い下がる。 お前の告白が大したことじゃないわけあるかぁぁ!!俺がどんだけ言わせたかったと思ってんだ!!まだ何も言われてないけど!! 「それでも待ってくれ。今運転中で危ないからな」 卯月は観念したのか、ついに黙った。ごめんな、俺は運転の片手間なんかにお前の愛の告白を聞きたくないんだよ。 それから10分ほど車を走らせて、俺の住む賃貸マンションが見えてきた。自分の駐車スペースでバックで車を停めると、先に降りて助手席のドアを開けてやる。 なんでこんなことするのかって? 逃 が さ な い た め だ よ(※顔が完全に犯罪者です) 「あ……ありがとうございます」 うっとりと俺を見つめている卯月が純粋すぎて、胸が痛いような痛くないような。 俺、心の汚れきった大人でゴメンな……正直、あんまり反省してないけど。 そのまま、逃がさないように卯月の手をがっしりと掴みマンションのオートロックを開けてエレベーターに乗り込んだ。 本当はエレベーターの中で抱きしめたりキスしたりしたかったが、監視カメラがついてるからな。さすがに制服を着た子にそんなことをするのは世間体が悪すぎる。私服だったらしてたけど。 「ここ、俺の部屋だから覚えといて」 「は、はい……」 卯月に合鍵を渡して先に帰ってもらってエプロン姿で『南條先生(ダーリン)、お帰りなさい!』って出迎えてもらうのが今の俺の夢だ。夢というか、目標?どっちにしろ近いうちに達成するけどな!!

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