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第49話 悪くない痛みと

ぅわあっ!! 家から電話の着信が5件…… お母さんのケータイから3件…… 葉月姉さんのケータイから5件…… 皐月姉さんからのケータイから6件…… きさ姉からのケータイから8件…… りっちゃんから2件…… かなやんとあいちんから1件ずつ…… 永田氏からワン切りが3件(ただの嫌がらせだな) 2時間半の間でどんだけ俺のケータイ震わせてんだよ!!おまえら暇だな!! 「どうした?大丈夫か?」 「えっ、ええ……まあ、ハイ」 あっ、お母さんから新しいメールが来た。 『卯月、今日中に必ず南條先生を連れて帰ってきなさい』 ひとこと……。 「逆にこえぇわ!!!」 「!?……ど、どうしたんだ?」 「南條先生ごめんなさい!!迷惑かけます、最初に謝りますマジでごめんなさい!」 俺は痛む腰をゆっくりと曲げれる範囲まで曲げて、土下座っぽいことをした。 南條先生はそんな俺に多いに混乱している。 「何がだ?あ、もしかして親御さんに謝りにいくこと?いや俺全然そんなの苦痛じゃないし、むしろ大事な息子さんを遅くまで連れまわしてごめんなさいって謝る気満々でいるし」 「そうじゃないんですぅ!!うちの家族ヘン(タイ)だからぁ!!」 南條先生を連れて帰ったらもう、ドン引きするくらい歓迎してくるパターンだよ!! たぶんっていうか絶対失礼な質問とかするだろうし!そのための謝罪だよ!! そして連れて帰らなかったら絶対に俺、袋叩きにされるっていうね!! 「卯月、俺はお前の両親がどんなに変わってても受け入れる自信はあるぞ?ちゃぶ台ひっくり返すような親父でも、俺はちゃぶ台をよけてみせる!」 「そんな昭和的な感じでもないんです!!お父さんはむしろまともな方なんですぅー!!」 でも俺を溺愛してる親バカなんです! お父さんから着信がないってことは、まだ帰ってきてないみたいだな。それだけが救いだ!! お父さんは比較的まともだけど、今の俺を見てまともでいられるはずがない。 なんたって俺、お父さんの中では娘ポジだからね!! 南條先生が殴られたらどうしよう……!いやいや、そこは俺が絶対に守らなければ!! 問題はあの腐女子どもだよ!! 「とにかく家族に返信しなさい。9時までには絶対帰るからって送るんだ。んで、お前はこれから風呂だな。腰が痛むだろうから、俺が洗ってやる。……あ、もうエロいことはしないからな!?安心して任せろ」 「はい……」 じぃぃん……やっぱり俺のことを一番気にかけて考えてくれるのは、この世で南條先生だけだ。その次にりっちゃん。 いつか鼻血を出してぶっ家倒れたときみたいに。 帰って家族からの仕打ちを想像した今、南條先生の優しさが身に沁みます、俺。 腰にもしみてるけどな。 優しさというか、痛みが。 まあ、南條先生から受けた痛みだからいっか。 もしかしてこれが甘い痛みってやつ? 「ほら、卯月。風呂場に移動するから俺の腕に掴まれ」 「はい」 南條先生は、俺をお姫様抱っこしてくれた。(誰か資料用で写真撮ってぇ!!って思った) お姫様抱っことか超恥ずかしいんだけど、顔も見れないし……。 でもその反面メチャメチャ嬉しくて、俺は先生の胸に頭を預けた。 まあ、うん。 ……悪くない痛みです。へへっ。 * 再び南條先生のフィアットに乗って、家の前まで送ってもらった。今の時刻はジャスト21時。 「こ、ここが俺の家です」 「知ってるよ、何回も送ってるだろ?」 「そ、そうですけどぉ」 俺が緊張しすぎているせいか、南條先生はあまり緊張してないように見える。 そう見せているだけかな……? 内心は先生の方が焦ってると思うんだけど。 もちろん、俺とは違う意味で。 だって俺の家が腐女子の巣窟……いわゆる腐海じゃなかったら、きっと辞職モノだよね? 男子とはいえ、自分の教え子(しかも未成年)に手を出すとかさ。 なのに南條先生は、なんでこんなに落ち着き払ってるんだろう。もしかして、本当に学校辞める覚悟ができてるの? 俺のために南條先生が学校を辞めるなんて…… そんな事態は間違ってもあっちゃいけないよぉ―――!!! まあ、うちの家族に限って南條先生を訴えるなんてことはありえないけど。 でもなんか、南條先生自分から『責任もって辞めます』とか言い出しかねないような……そうなったら家族に全力で止めてもらおう、うん! 「家の前に車停めても大丈夫か?」 「あっハイ!大丈夫です」 絶対エンジンの音で帰ってきたのはバレてるだろうな……。 ドキドキしながら鍵をあけて、ドアを開ける。 「た、ただいまぁ……」 恐る恐る玄関に入ったけど、家の中は何故か薄暗くてシーンとしていた。 「あれっ?」 おかしい。 玄関に待ちかまえられてクラッカーでも鳴らされて迎えられると思ったのに! 南條先生が来たというのに、誰も玄関に迎えに来ないなんて…… え。まさかと思うけど、本気で怒られるパターンじゃないよね??あり得ないよね?? もし本当に先生を追い込むような事態になったら、俺も一緒に学校辞めるし! 二度とこの家には帰らないし!!うん、今決めた!! 「どうした卯月、誰もいないのか?」 「いや、リビングにいるはずです。南條先生、どうぞ遠慮せずに上がってください」 「あ、ああ」 心なしか、南條先生も少し緊張しているようだった。 緊張してる顔もイケメンです、ありがとうございます!

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