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第51話 もしかしなくても歓迎してます
そして改めて、南條先生にはソファーに座って貰った。その周りをなんらかの撮影道具を持って囲む腐女子ども。
いい加減にしろよ!俺だってまだ先生の写メ持ってないのにー!!
「な、南條志信です、南空高校で化学教師をしています。その……卯月君とお付き合いをさせて頂いてるといいますか」
「勿論存じ上げてます~、卯月の母の雨宮弥生ですっ」
お母さんのこんな笑顔、初めて見たぞ。
てゆーかなんで知ってんだ、言ってないのに。
「あ、あの……一介の、しかも男子生徒に対して、とんでもない教師だと思われたでしょうが……」
「そんなことないですよ、むしろこっちがありがとうございます!!卯月の姉の葉月です!」
葉月姉さん、涎自重しろ……!
「!?……あ、それでですね、俺はかなり真剣でして……卯月君のためなら学校も辞める所存で」
「えええ!?ダメですよ南條先生!先生×生徒ってのが最高に萌えるんですから!むしろ弄ぶくらいが丁度いいっていうか。あ、卯月の姉の皐月でーす」
「!?」
弄ぶのが丁度いいだとお!?
なんてこと言うんだよピン子姉さん!!
「てゆーかお父さんは!?きさ姉!」
「明日締切らしいから会社に泊まり込みだぞ。ていうか卯月、僕にも自己紹介させろよ」
「うーっ」
すると、南條先生は目をぱちくりさせてきさ姉を見た。
なんですかその顔、可愛いカッコいいっ!!!
「卯月、さっきお姉さんが三人いる、って言わなかったか?えっと、君は卯月の……」
南條先生は焦った顔をして、俺ときさ姉を交互に見ている。
あっ、そうか。
きさ姉は見た目は完全に金髪のイケメンだから、男と思われちゃってるのかな?
それか、斜め上に『お姉ちゃんになりたいお兄ちゃん』と思われてるのかのどっちかだな。
「卯月の兄の、如月です」
「いやいやいやいや、姉ですよ!!こー見えても!きさ姉は女です!!」
「すぐバラすなよ、卯月……」
「むしろなんで嘘吐く必要があるの!?」
意味わっかんないから!彼氏とかいる癖に、男だと思われる必要ないだろ!!
「あ……いや失礼、よく見たら綺麗なお嬢さんだな。上のお姉さんたちも美人だし、お母さんにそっくりですね」
南條先生が慌ててきさ姉に訂正した。
お母さんたちはイケメンに褒められてきゃーって喜んでる。
「……………」
なんか、お姉ちゃんたちだけ南條先生に褒められてずるい。
まあ、確かに見た目は完全に男の俺が一番地味だけどさー。
てゆーか俺だけお父さん似だけどさー。
なんだろ、なんか面白くない。
「うふっ、南條先生、卯月がスネてるので可愛いって言ってやってください~」
は!?
「ちょっと、葉月姉さん!?べっべべべつに拗ねてなんかないし!!!何で俺だけ褒められなかったからって拗ねなきゃいけないんだよ!!」
「卯月お前、分かりやすすぎるぞ」
「きさ姉まで!?拗ねてないから!!」
ただ面白くないだけで!!
「ごちゃごちゃうるさいわね、さっさと南條先生に甘えなさいよ卯月っ!!」
「何だよその命令は!!」
欲望見え見えなんだよ!!
全員でカメラ構えんな、腐女子三姉妹!!
「南條先生、騒がしくてすみません~」
「いや、なかなか新鮮です……というか、ひとつ質問をしてもよろしいでしょうか」
「なんですか?」
能天気に微笑む母を前にして、南條先生はゴクリと生唾を飲み込む。
喉仏単体でも男前ってどうなの!?萌え!!
「俺は……その、もしかして歓迎されてるんですか……?」
え……南條先生、いまさらそこ?
「もちろんです~!だって卯月が片想いしてる時から家族全員で応援してたんですから」
「ちょ、お母さん!?」
ついでに何を暴露してるんだよ!?
やめろぉぉぉぉぉ!!!!
「えっ、そうなのか?卯月。片想いって」
「えーとそのっ、そのですね……うまくは言えないんですが……!」
片想いしてたっていうか、自分の気持ちがわかってなかったんだよ!!
それを周りから『好きだろ?』『絶対好きだろ??』って後押しされただけなんだけど、それをどうやって説明すればいいんだ!
「卯月……」
あ……でも南條先生、なんかすごく嬉しそう。
余計なことは言わなくていっか。
すると、お母さんが南條先生に聞いた。
「南條先生、明日は何かご予定があるんですか?」
「え?特には無いですが」
予定無いんだ。だったら明日、俺と会ってくれないかなぁ。なーんて。
「では今夜泊まっていってください!是非!」
「ちょっ、お母さん!?」
いきなり何を言い出すんだよ!!
「今夜はお父さんがいないから防犯の面でも心配でしょ?それとも卯月が一人で私たちを守ってくれるのっ?ペンしか握ったことのないようなそのひょろ腕で!」
「ひどっ!確かにひょろ腕だけど、もうちょっと重い物も持てるし!!ていうか何も起こらないだろ!!」
「そんなの分からないじゃないの!」
「つーか姉さんたちの方が圧倒的に俺より強いし!特にピン子姉さんは!!」
「てめっ!またピン子って言いやがったなコラぁぁ!!」
「わああぁ南條先生助けてぇー!!」
俺はさっと南條先生の後ろに隠れた!
先生がいるからわざとピン子呼びしてやったんだもんね!
日頃の恨みを晴らさせて貰いました!!
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