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第52話 お泊り決定
「そういうことなら、お邪魔させて頂こうかな。最近物騒ですからね。卯月と、卯月の大事な家族に何かあったら俺が嫌ですし」
「な、南條先生……」
南條先生の言葉に、母や姉たちはきゃーっと黄色い歓声をあげて喜んでいる。きさ姉まで!
「いいか?卯月」
「おっ、俺はもちろんいいです!!でも」
「でも?」
何かある(と期待されてる)のは、俺と先生の方なんだよ~~~っっ!!
「い、いえ、何でもないです……」
でもさっきあんなに激しいエッチしたし、さすがにもう今夜は何もしないよね。
って、俺が期待してるみたいじゃんか!!
ないない!それはないっ!!
すると、葉月姉さんが。
「南條先生!お願いがあるんですけど、少しモデルをやって頂けませんか!?」
「モデル?写真ですか?」
「いえ、イラストです!ちょっと絡みポーズで描くのが難しい格好があって……あ、私アマチュアの同人作家なんです!本業は看護師なんですけど」
「どうじん作家?」
オタク事情に全く詳しくない南條先生は、姉の言ってることがよく分からないらしい。
「母は漫画家なんです。それに卯月も私と同じアマチュア同人作家で。聞いてないですか?」
「え、卯月も?てか、漫画家って……」
「ちょっと姉さん!ペラペラと先生に話さないでよ!!大体まだ腐男子ってことも言ってないんだからなー!!」
「フダンシ??」
ああもう!
カミングアウトするつもりなかったのにー!!
部屋で色々見られたら即バレしそうだけど、なんとか誤魔化すつもりだったのに……!!
俺は姉をぎろりと睨んだ。全く迫力がないのはわかってるけどな!!
すると、きさ姉や皐月姉さんまで言いだした。
「なんだ卯月、お前まだ言ってなかったのか」
「別に両想いなんだから今更バレたってなんてことないでしょ、さっさとカミングアウトしてしまいなさいよ」
ああああ理不尽!!恥じらいを忘れた奴らめ!!黙れ!!
「すいません。俺にはさっきからなんの事だか分からないんですが……卯月、俺に何か隠してることがあるのか?」
「ううっ」
南條先生が優しく俺に問いかけた。
そ、そんな顔で見つめないでくださいっ!鼻血出るぅ!!秘密なんてありますよ、ありすぎますよ!!
毎回南條先生をモデルに漫画描いてることとか南條先生で妄想してることとか南條先生でオナニーしてることとか、もう秘密だらけだよ!!
でもしょうがないじゃん!!思春期の腐男子なんだからさ!!
「俺には教えてくれない、のか?」
「い、いや、そういうわけでは」
言ったところで、いまさら南條先生が俺を嫌ったりしないのは分かってる。
分かってるけど、実はオタクに全然理解がなくて、もしかしたらもしかして、嫌われたらどうしようって思って……実は、ちょっと目を背けてた。
南條先生に、嫌われたくないよ!
「あーもう焦れったいわね!!如月、卯月を抑えといて。お母さん、葉月姉さん、南條先生に同人とBLと腐女子と腐男子の説明するから、足りない説明があったら補足して」
「了解」
「ちょ、ちょっとぉぉ!?」
俺はいきなり後ろからきさ姉に羽交い締めされた!
全然動けない!力強すぎだろー!!きさ姉、力までリアル男になってしまったのっ!?
彼氏って実は女の子なの!?
いや、俺が貧弱なんじゃないから!それは違うからー!!
「いいよ~でもさっちゃんが一番説明上手だよねぇ、小説書いてるもん」
「ねー、あ、お母さんBLの資料たくさん持ってくるわね、卯月の部屋から☆」
「あ、じゃあ前回の冬コミで出した新刊持ってきたら?確か南條先生にそっくりな攻めが」
「そうねっ!」
「や、やめてぇぇぇ!!それだけはぁぁ!!後生だからぁぁぁぁ!!」
「うるさいぞ卯月、暴れるな!」
「ひぃぃん!」
膝で尻を蹴られた!!ひどい!こんなの酷すぎるよ!!
俺が先生に振られたら、ぜーーーんぶお母さんと姉さん達のせいだからなぁぁぁ!!
ふえぇん……。
「さぁさ!南條先生、ここだと卯月がうるさいから奥の座敷にでも移動しましょー!」
「え、で、でも卯月すごく嫌がってるような」
嫌がってます!!とても嫌がってますよ!!って言いたいけどまた尻蹴られるからやだぁ!
南條先生気付いてぇぇ!!
「あれは照れてるだけなんで問題ないです!」
おいっ!ピン子貴様ァァ!!
「そ、そうなんですか?」
「「問題ないです~」」
母と姉2人にキッパリ肯定されて、南條先生は奥の部屋に連れて行かれた。
そして俺は、やっときさ姉から開放された。思わずフローリングの上に泣き崩れる。
「ううう」
「何泣いてるんだよ、お前がさっさと言わないからだぞ。これから付き合って行くのにまさかバレないとでも思ってるのか?お前が女なら隠し通すのは可能かもしれないが、男だから絶対に無理だな」
「なんでだよ!隠せるよ!」
「擬態もできないガキが、生意気言うなよ!」
「ううっ」
擬態って、擬態ってぇぇ!!(※一番擬態が上手いのは皐月姉さん)
ちくしょう、やはり腐女子の方が腐男子よりも色々と格上なのか……悔しいっ!
「そんなに心配するな、卯月。南條先生はお前のことが好きなんだろ?男同士のチョメチョメを見たり描いたり読んだりするのが好きって趣味くらい、寛容に受け止めてくれるさ」
「それって、くらいって言っていいの?」
言葉にするとだいぶアレな趣味なんですが。
「そりゃそうだろ。僕の彼氏は普通に受け止めてくれたぞ」
「きさ姉の彼氏の話はもういいよ……っていうか相手、ホントに男の人なんだね」
「何言ってんだ、当たり前だろ」
はあ……。あ、でも男だから俺の味方になってくれるかも?
いやいや、誰が好き好んで、大好きな姉の彼氏なんかと仲良くしてやるもんか!(※シスコン)
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