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第53話 南條先生、卯月姉からBLを教わる①

【南條視点】 卯月と念願の初セックスを終え、卯月の母から『南條を家まで連れてこい』とのお達しで家まで送ってノコノコと上がり込んだんだが……何故だか俺は手厚く歓迎されていた。 『よくもうちの可愛い息子を!!』って張り倒される覚悟もしてたんだけどな。 挙句の果てに泊まっていけって、ホントにいいのだろうか? まあ、確かに女4人と卯月だけじゃ防犯面が心配だから構わないけどな。 お姉さん達も何故かえらく寛容で、なんだかその理由は俺が並外れたイケメンだからって理由だけじゃない気がする。 なんか……なんていうか…… 授業中に卯月が俺に寄せてくる視線とどこか似てる気がして。 卯月みたいなあからさまに『好きです!』ってオーラは無いけど。 そして現在、俺の前には卯月の母と姉二人が、すげー真剣な顔で俺を見ている。 卯月の秘密を教えてくれるみたいだけど、知りたくないと言ったら嘘になるけど、本人があんなに嫌がっているのに俺が無理に聞いていいものだろうか。 どうせならベッドの上で可愛がりながら聞くとかな……フフフ…… 「南條先生」 「あ、はいっ」 卯月が一番恐がっていた、次女の皐月さんに正面から声を掛けられて俺の妄想は停止した。 ギャル上がりっぽい服装と髪型と化粧で、美人だ。 しかしまだ20そこそこだろうに、何処ぞの大御所女優みたいなこの迫力は一体何だろう。 「先生は、BLという単語をご存知ですか?」 「ビーエル?新しい元素記号じゃないですよね。だとしたら化学教師の俺が知らない方が問題ですけど……」 「フフッ、違いますよ。ボーイズラブの略です」 「ボーイズラブ?」 ぼーいずらぶ……BOYS・LOVEか? なるほど、頭の単語を取ったら確かにBLだ。 ん、で……つまり……少年愛? 「直訳すると少年愛ですけど、別に少年に限ったものじゃありません。大人同士はメンズラブ、MLという単語も使われますけど、まあ広い定義で言うとMLもBLの一部です」 「はあ」 「ま、つまりは男同士が恋愛する漫画や小説のジャンルの総称をBLと呼ぶんですよ。でもBLの読者は大体が女子で、女性向けジャンルに分類されます。リアルなゲイの方々が求めるものともまた違うんです」 「へええ」 つまり、少年漫画や少女漫画などジャンル分けをする中で、BLというジャンルが存在するわけか。 初めて知ったな……俺、ゲイなのに。 あ、女性向けだから知らなかったのか。 そもそも漫画とか俺、全然読まないしな。 「そしてBLを愛する女子のことを、腐った女と書いて腐女子と呼びます」 「婦女子?いや、腐女子……か」 「昔はそんな呼び方されてなかったんですよぉ、いつからそう呼ぶようになったのかしら?」 そう、口を挟んできたのは卯月の母の弥生さんだ。 その隣の長女、葉月さんが質問する。 「昔は何て呼ばれてたの?」 「同人女よ」 「ふうん」 ま、また分からない単語が出てきたな。 「もう、お母さん口を挟まないで!せっかく先生に1から説明してるんだから!」 「ごめんねさっちゃん。続けてっ」 なんだか、かなり深い話になりそうだ。 俺も姿勢を正すと、再び皐月さんに向き合った。 「でっ、話は戻ります!先生、腐女子のことは分かりましたよね?」 「はい、まあなんとなく」 要するにゲイが好きな女のことだろ。 しかし……何故だ?? 俺達ゲイというのは、女にとっては嫌悪の対象だとばかり思ってたのに……逆も然りだけど。 あ、普通のゲイが求めるものとは違うっつってたか……でもよくわかんねぇな。 「それで、私達姉妹は腐女子なんですよ」 「ほほう」 だから俺のことを歓迎してくれたのか。 つか、ゲイを好きになるとか不毛すぎないか? 「そして、弟の卯月は腐男子」 「ふ……だんし?え?」 「稀に、男でもBLが好きっていう人種がいるんです。卯月がそれです、100%私達姉妹と母のせいなんですけど」 卯月が、腐男子……。 「ってことは、最初から卯月はゲイ」 「自覚は無かったみたいですが。って先生、腐男子でも恋愛対象は女子だって人は沢山いますよ?腐男子イコールゲイではないんです」 「え、だって好きって」 「ああ、すみません、言葉足らずでしたね。私達腐女子はそういう趣向の男性そのものが好きなんじゃなくて、男同士がイチャイチャしてるのを見るのが好きなんです。萌えの対象なんです。恋愛対象は勿論普通の男ですよ。あ、萌えって分かります?」 「それは……なんとなく」 猫耳萌え、とか変態の従兄弟が言ってたもんな。 なるほど、そういうことか。 それで卯月は腐男子……ふうん。確かに人には隠したい趣味なのかもな。 別に俺は引いたりしないけど。

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