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第57話 南條先生、謝る。
「ちょっと、お母さんたちぃぃ…!!」
俺が何を言おうと丸め込まれる(反撃される)のは分かっているけど、文句の一つくらいは言いたくなるじゃないか!
そりゃ、家だってことを忘れておっぱじめた(キスだけだけど)俺たちも迂闊だけどさあ!!
「晩御飯用意できましたよーって呼びに来たの!でも、南條先生には先に卯月を頂いてほしかったわぁ~」
にっこりと笑顔で恐ろしいことを言うお母さん。
愛する息子を前にしてなんてこと言うの!?
そして手にはおたまではなくて、しっかりとカメラが。ドア閉まってたよね?
……よね??
「馬鹿ね卯月!ここが家だからってなんなのよ!せっかく南條先生が押し倒してくれたっていうのにそのまま甘えてエッチ突入しないなんて、情けない子ね!お姉ちゃん、そんな弟を持った覚えはないわよ!!」
怒りながら泣くふりをしている葉月姉さん。
いやいや、俺もそんな無節操な弟になったつもりは無いですから!!
弟のラブシーンを嬉々として見守る姉を持った覚えはめっちゃあるけどね!!
「ほんっとに、アンタにはガッカリ。雨宮家の長男のくせになんなのよその体たらくは!?自分の家なんだからむしろ喘ごうがわめこうじゃ好都合じゃないのよ!しかもBLでお馴染みのいいところで邪魔をする空気読めない親も姉もアンタにはいないっていうのに!道具が欲しけりゃそっと差し出すくらいしてやるわよ!ああもう、ほんっとに情けないったら!それでもエリート腐男子なの!?」
心底呆れた顔をして、わざとらしく長いため息をつく皐月姉さん。
いや、空気読みすぎな家族も嫌ですから。
横からそっとゴムとかローションとかバイブとか差し出されても、目の前で使いだしたりとかぜってぇぇえしねぇから!
腐男子であることもカンケーねーし!
つーかなんで俺がエリート腐男子って自称してるのを知ってんのさ!?!?(恥)
「よし卯月、今からでも間に合う!南條先生の元に行ってファイトしてこい!」
「行かねぇよ!!」
何できさ姉は松岡○造みたいなノリなんだよ!!
揃いも揃って勝手なことばっかり言って、この腐女子どもはあぁ!!
ぜってーてめーらの言うとおりになんかならないからなぁぁああ!!!!
「あ、あの、スイマセンでした。途中でやめてしまって……」
「ちょっ!?南條先生、そんなことで謝らないでぇえええ!!」
南條先生が謝る必要なんて何一つないのに!!
このおかしな空気に毒されたのか、流されたのか……どう考えても向こうの頭がおかしいのに、すげぇな腐女子。
そして俺は、二度とこの家ではいやらしいことはしない、と心に決めました。
そのあとは、リビングで腐女子どもから南條先生への質問攻撃をなんとか俺がかわしつつ、食事を終えた。
食事のあと、南條先生をモデルにしてスケッチを始めたお母さんと葉月姉さん。
あ、もちろん俺も。
何故かきさ姉も受け役としてモデルに参加してきた。
絡みポーズとかを要求されたとき、南條先生は少し焦った顔をしていた。
俺は相手が自分じゃないのが少し悔しかったけど、きさ姉のほうが絵になるし、俺も先生を描きたいから特に何も言わなかった。
そして繰り広げられる、とんでもない会話。
『くっそ萌える!如月ちゃんが男の子だったら弟からの略奪も全然ありね!』
『ありよアリアリ!さっちゃん、きさちゃんを性転換して卯月から南條先生を奪う小説書いて!』
『なんだそれ、僕も読みたい!僕なら卯月と違って家族がいようがいまいが絶対に襲うぞ!』
『ほほう……南條先生は卯月に対しては攻めだけど、きさちゃん相手には受けっていうのも美味しいわね、きさちゃんどっちかっていうと攻めだし……やばっ!リバ美味しすぎる!!そしてゆくゆくは3P……!』
『『『きゃーっ!!』』』
いや、きゃーじゃねぇよ!!
何勝手に俺から先生奪うとかリバるとか言っちゃってんの!?ふざけんなっ!!
しかもきさ姉が『男の子だったら』って!
普通は姉のままで略奪すんのが普通じゃねえ!?
もちろん俺は突っ込んださ。
誰も聞いちゃいなかったけどな。
しかし南條先生だけはこっそりと……
『卯月、リバってなんだ?』
と聞いてきた。南條先生にあんまりそういう単語教えたくないよぉぉ!!
結局教えたところ、先生は何か納得がいかなかったようで。
『あの、俺はバリバリのタチなので、突っ込まれるとかありえないですよ……』
ってズレたツッコミしてた。それはそれで歓喜する腐女子ども。
攻め×攻めも美味しいって……奴らに萌えないシチュはないのかよ!!
いや、俺だって自分が当事者じゃなかったら一緒に喜んでたけどね!?
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