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〈3〉南條先生に相談してみる
「……コホン。お主らの生きがいであるBLネタ妄想にされるのはムカつくが、とりあえず何も言わんでござる。でも拙者は男と付き合う気なんて一切ないでござるからな!!」
「でも永田氏、うっちゃんに彼氏になってもらいたいんじゃないの?」
「だから、フリでござる! 雨宮氏に彼氏のフリをしてもらったら奴も諦めるでござろう?」
「てかりっちゃん、俺永田氏と付き合う気無いから。南條先生ラブだから」
「告白する前からうっちゃんにフラれる永田氏、可哀想……」
「でも不憫でちょっと萌える……」
あいちんとかなやん、ヒソヒソ話してるけど普通に聞こえてるからね?
だいたい俺たちは普通に友達だから、永田×卯月を推すのは止めてほしいんだけどぉ!?
「雨宮氏に南條先生がいるのは無論承知しているが、他にこのようなことを頼める相手がいないのでござる」
「まあ、うっちゃん見た目も可愛いしねぇ」
「永田氏のアニヲタ仲間達じゃ、恋人って言い張るのは無理があるよね」
「ちょっとそれ失礼じゃない!?」
俺が可愛いってのは嬉しいけどね!?(身内の幼児が可愛い的な意味だから)
でも俺が可愛いって言われて嬉しいのは、南條先生にだけだから!
するとりっちゃんがボソっと言った。
「そんなしつこいドM野郎が、好きな相手に彼氏がいたからって簡単に諦めるものかしらね……」
「こ、恐いこと言うなでござる、池田氏」
りっちゃんは吉村くんにしつこくアプローチされてるから妙な説得力がある。
俺、一部でりっちゃんの彼氏ってことになってるからね。
って、その上永田氏の彼氏のフリするとか俺、周りから見たら超無節操野郎じゃん!嫌だよ!!
「だってうっちゃんが彼氏なら、ちょっと脅せば簡単に奪えそうじゃない?永田氏のこと」
「りっちゃんさっきから恐いこと言わないでよ!てか、ひどいよ!」
つい永田氏じゃなくて南條先生相手に想像しちゃうじゃんか!!
平凡顔でごめんなさいね!!
俺だって常にその心配はしてるんだよ!!
「ていうか、なんで彼氏役なの?相手が男好きなら女子と付き合ってるフリした方がノンケアピールできていいんじゃないの?男には興味ないって最初に言ってるんだしぃ」
あいちんが言った。それは俺もかなり納得できる意見だと思った。
でもそれなら、あいちんかかなやんが彼女のフリをしなければいけないのでは……。
「三次元の女と付き合うなんて、たとえフリでも嫌でござる!!それに拙者にはあこりんという二次嫁がいるからたとえフリでも他の女に浮気なんかしないでござる!!!」
うーん、永田氏のオタク魂に完敗です。
今度は珍しく女子三人が引いちゃってるよ!永田氏すごい!さすが!
「とにかくそんなこんなだから、是非雨宮氏に彼氏役を頼みたいのでござる。南條先生には拙者も頼みに行くでござるから」
「え……それは止めた方がいいと思うけど」
「なんででござるか?」
「いやあ、だって」
南條先生、俺のコトが大好きだもんねっ!
*
次の日の昼休み。永田氏と二人で化学準備室に訪れました
「だが断る」
南條先生は永田氏の話を真剣に聞いたあと、かの名ゼリフを(多分知らないんだろうけど)自然に言ってのけた。
ふおぉお、カッコイイ……!録音しておけばよかったぁー!!
「だから、無理なことは百も承知でお願いしてるんですが」
「ダメなものはダメだ。大体真剣に告白してきてる相手に対して嘘を吐くのは卑怯だろ。キッパリと断ればいい」
「そうしても相手には通じないから、こうして雨宮くんにお願いしてるんですけど」
永田氏、南條先生相手には口調が元に戻るんだな。当たり前か。
「そもそも、何で卯月なんだ?可愛い男子なら他にもいるだろ、A組の吉村とか」
「彼は可愛すぎて逆にリアリティが無いんです。大体そんなこと頼める間柄じゃありませんし……」
「俺が頼んでやろうか?奴には貸しがある……いや、こっちの話だ」
南條先生が吉村くんに貸し?……ああ、前につきっきりで勉強教えてたことかな?あれって貸しなんだ、さすが南條先生!
まあ、確かに吉村くんは可愛すぎるよね。永田氏がそうそう美形にばっかりモテるなんてさすがに不自然だよね。それこそBLの世界かってのー!(笑うところ)
それに、吉村君はゲイじゃないし……
って、別に俺も男が好きってわけじゃないけど!!
好きなのは南條先生だけだし!!
男が好きなんじゃなくて、南條先生だから好きになったんだしー!!
はっ、これはもしやBLでテンプレのセリフかっ!?
「卯月、ちょっと永田と二人にしてくれるか?」
「えっ」
「安心しろ、永田に何かしようってワケじゃない。俺にだって好みがあるからな」
「むしろ何かされたらこっちが強制猥褻で訴えてやるでござる」
「あん?」
「おおん?」
《バチバチッ》
ちょ、ちょっと!なんか二人の間に火花が見えるんですけどー!?
南條先生もちょっと怖いし!(※卯月は南条先生が腹黒いことを知らない)
二人にしても大丈夫なんだろうか……。
一抹の不安を覚えながらも、俺はりっちゃん達が待機してる化学室の方に向かった。
あ、今日のお弁当は美術室じゃなくて化学室で食べてまーす。
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