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〈4〉卯月以外は知っている

 おっと、突然雨宮氏から視点が切り替わったでござる。  まさか拙者のようなモブキャラがナレーションを務めるなんて、読者様もまさかの展開でござろう……  ってそんなことはどーでもいいんでござる!  南條先生、もっと堅物で物静かなキャラだと思ってたでござるが、なんか二人になった途端ガラッと雰囲気変わったでござる!!  いや、さっきからちょっと口調キツイなーとは思ってたでござるが!それはまあ話題が悪かったってのもあるでござろうけど! 「永田てめえ……俺の可愛い卯月に恋人のフリしてもらおうなんて、100万年早いんだよこのクソガキィィッ!!」  こーわっっ!!  誰でござるかこの人!? 普段めっちゃ猫被ってるじゃねーか!!  あまりの衝撃にござる口調を忘れたでござる。  それにしても雨宮氏、自分が思ってる以上に南條先生に愛されてるでござるな。 「南條先生、その豹変ぶりは雨宮氏は知ってるでござるか?」 「ああん? 知ってるワケねぇだろ。てめーこのこと卯月に話しやがったら次の化学のテスト強制的に0点にしてやるからな」 「職権乱用!!」 「うるせぇ、使えるモンは全部使うに決まってんだろうが! ……で?卯月に彼氏役はさせねぇけど、どうするつもりなんだよ」 「え?」 「八代のことだよ。つーかあいつはホントにお前のことが好きなのか? 去年教えてたから奴のことも一応知ってるけど、あいつはずっと千歳に惚れてたはずだぞ。いきなりお前みたいなのに鞍替えするもんかね……」  チンピラみたいになったかと思えば、あの四人よりもマジメに拙者の話を聞いてくれていたようだ。拙者、ちょっと南條先生のこと誤解してたでござるよ…!  『お前みたいなの』とか暴言吐かれたけど。 「……えっと、八代は千歳シンジに惚れてたのでござるか?」 「俺が見た限りではな。まあアレだ、親友とはいえ芸能人に恋しても不毛だし、千歳に恋人でも出来たのか……そんな噂を職員室でチラッと聞いたな。それで千歳とは真逆タイプのお前を好きになって千歳のことを忘れようとした……ま、そんなところだろう」 「ふおお……!」  南條先生の考察がスゴイでござる!! さすが大人でござる!  でもそれってなんか少しムカつくような……? 「別に偽モンの彼氏作って相手するまでもねぇよ。ほっときゃいい。そうすりゃあいつもいずれ諦めんだろ」 「それまでは、このストーカー行為に耐えろと?」 「つーかいっそのこと、付き合えばいいんじゃねえか?」 「はああああ!?」  いきなり何を言うでござるか、この二重人格チンピラ教師!! 「卯月に訊いたけど、お前現実の女が嫌いなんだろ?二次元の女は好きだけど。じゃあ、もうリアルに付き合える相手は男しかいねぇじゃねーか。相手はイケメンだし、この先一生あるかないかくらいのチャンスだぞ?ブサイクな女と付き合うよりよっぽどいいと思うけどな」 「いやいや、俺は男とも女とも付き合いたくないし!!」 「今はガキだからそう思ってても、そのうち人肌が淋しくなるぞ~。一生童貞処女のつもりか?別にいいじゃねえか、好かれてるんだし。セフレとしてキープしときゃ」 「教師がなんつーゲスな提案をしてくるんですか」  雨宮氏、お主の彼氏はとんでもない腹黒野郎でござるよ……。

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