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〈5〉いざ、トーガクへ

「あっ永田氏!南條先生と何話したの!?」  永田氏が少しげっそりした顔で化学準備室から出てきた!  南條先生の美形オーラにやられちゃったのかな?初心者にはキツイよね! 「いや……ちょっと色々と相談したでござる……」 「相談?」 「まあ、その……雨宮氏に彼氏のフリをしてもらうのはやっぱり諦めるでござるよ。後が恐いから……」  あらら。  永田氏がそう言った途端に「えーっ!」と声をあげたのは勿論腐女子さん達だ。 「教師×生徒もいいけど、同級生BLも期待してたのにー」 「ねー!」 「フリとはいえ、どこまでするのかも見ものだったのにねー!」  俺たち、完全に腐女子のオモチャだな……。  でもまあ良かった、彼氏のフリったって、ほんとどこまでしたらいいのかわかんないもんね。ハグとか手を繋ぐくらいなら余裕なんだけど、キスとかは無理だし。 「とにかく、逃げ回ってばかりじゃなくて一度八代と話し合ってみるでござる」 「付き合ってみるの?」 「突き合ってみるの??」 「お前らホント最低でござるな!!」  俺も一瞬脳内変換しちゃったけど、永田氏が可哀想だったから言わなかったよ!  でも話し合いって、大丈夫なのかなぁ……?  そもそも、八代先輩ってどんな先輩なの?  すると、かなやんがケータイを見ながら言った。 「あっねえねえ、今週の土曜日うちのサッカー部が藤堂学院(とうどうがくいん)のサッカー部と練習試合なんだって。観に行こうよ!」 「ええっ藤堂学院(トーガク)!?あのホモの巣窟の!?絶対行くぅ!!」 「ただのお坊ちゃま男子校でござろう……」  永田氏が突っ込んだけど、誰も聞いちゃいねぇ。 「カメラも持ってかなきゃ!トーガクの男子ってレベル高いの多いしね!」 「うん!でも完全に目的を忘れてるね!」 「勿論八代先輩だってチェックするよぉ!てか千歳先輩も応援に来ないかなー?」 「最近はお仕事が忙しそうで学校にもあんまり来てないから無理じゃない?」 「ざんねん!!」  勝手に盛り上がる腐女子さんたち。  俺も一緒になって盛り上がりたいところではあるけど……。 「永田氏、八代先輩と話す時に俺も一緒にいてあげようか?」 「もしかしたら頼むかもしれんでござる。有難う、雨宮氏」  えへへ。  初めて永田氏…いや、男子にありがとうなんて言われちゃったよ。  なんか嬉しいなぁ。 *  そんなわけで、今日は土曜日です!  展開が早すぎるって?別にいいのです、番外編なので!  大体、まだ八代先輩とか名前しか出てきてないしね!BLにあるまじき展開ですよ。  番外編とはいえ、メインのヒーロー役がいまだに出て来ないなんて……!作者はいったい何をしてるんだよ!!  あっ、勿論今回のメインヒロインは永田氏です、俺じゃないよ。  いや、もしかすると八代先輩の方がヒロイン(受)なのかなぁ?主人公だけど分からないや。 「うっちゃん、さっきから一人で何ブツブツ言ってるの?」 「あ、いやこっちの話~」 「それにしても、かなやんにトーガクの友達がいるなんてね~!」 「コスプレしてる人たちって妙な人脈あるよねぇ」  みんなで今日の試合の場所、藤堂学院高校にお邪魔する予定なのです。  いや~でも本当、俺はスポーツマンの知り合いなんて一人もいないから部活の応援に来るなんて初めてなんだけど、別に知り合いじゃなくたって来ても良かったんだよね!  同じ学校の生徒なんだから、堂々と!  憧れの藤堂学院に潜り込めるなんて……いやっ、入れるなんて感動だ!! 「あ、森っち~!」  かなやんが校門前で友達を見つけたようで、ぶんぶん手を降り出した。  トーガクは男子校なので、その友達は当然男だ。 「あっ、かなちん久しぶり~☆」 「うん、久しぶり!元気だった?佳織さんも元気にしてる?」 「超元気にしてるよー☆」  彼氏みたいな感じなのかなあと思ったけど、そんな雰囲気は微塵も無い。  俺たち同様、やはり同類みたいな感じ。オタク特有の空気感が…。  『森っち』はちょっぴり派手な格好をしてるけど、ギャル男とかそんなんじゃなくて、どっちかというとパーリーピーポーに近い……でも、オタクなんだよね??レイヤー? 「どうもー!かなちんの友達の森哲也で~す☆えっと、そこの男子二人はどっちかがかなちんの彼氏ですか!?」 「ち、違います!友達です。えっと、俺は雨宮卯月っていいます」 「拙者は友人というか、知人でござるな。永田でござる」 「そうなんですねー。あ、俺1年なんで敬語はいらないっすよー☆」  森くんはとても気さくで、なんかあんまり藤堂学院の生徒って感じじゃなかった。  いや、偏見なんだけどね……。  なんかこう、もっとベルばら的な感じを期待してたっていうか。  お耽美な世界っていうか……妄想のしすぎか。言っても同じ高校生だもんね。 「でね森っち、こっちの美女二人がりっちゃんとあいちんだよ」 「わー女子だー!かなちんもかなりの美人さんだけど、こっちの二人も相当可愛いねー☆」  うお、さらっと褒めたよ!!やるなぁこの人……。 「池田律ですー、よろしくお願いしまーす」 「深町藍ですっ!しくよろ!」 「しくよろ☆いやーそれにしてもこんなに可愛い子達連れてきてくれるなんて、俺も可愛い子連れてくればよかったな~」 「え、可愛い子って男子だよね……?」 「もちろん!同じクラスにめっちゃくちゃ可愛い子がいんの☆声かけりゃよかった~」  男子校なのに可愛い子とはいかに…吉村くんみたいな感じなのかな?  しかし、この場合イケメン連れてくれば良かった、の間違いでは……。 「んじゃあ早速校庭行こうか!もうそろそろ試合始まるはずだからさー☆」 「せっかくの休みなのに案内とか面倒ごと頼んでごめんね、森っち」 「そんなの全然いいよぉ!かなちんの頼みなら何でも聞いちゃうよー俺☆」  か、軽いな……! でも嫌な感じの軽さじゃないや。  俺たちは森君のあとに付いて、まるで不審者のようにキョロキョロしながらぞろぞろと藤堂学院へと潜入したのでした。

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