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〈6〉それぞれの目的

 森君の案内でグラウンドまで来て、試合が見やすい場所を確保すると、俺たちは横一列に並んで腰を下ろした。  藤堂学院のグラウンドは、部活が盛んな我が校よりも広いし綺麗です。 さっすが金持ち高校!まるでBL漫画に出てくる男子校のよう……資料写真撮っとこ。 《パシャッ パシャッ》  色々な場所を撮影してると、永田氏がこっそりと俺に話しかけてきた。 「雨宮氏、ちょっと思ったのでござるが」 「ん、何?」 「この練習試合、拙者は来る必要なかったんじゃないでござるか。むしろヤツ……八代に見つかったら応援に来たと思われてめんどくさい誤解をされるパターンだと思うのでござるが」  あー……永田氏、気付いちゃったか。  実は俺も少し思ってたんだけど。 「でも八代先輩の顔って永田氏しか知らないでしょ?」 「大月氏が知ってるでござる」  すると名指しされたかなやんが。 「あ、ごめん!私も八代先輩の顔自体はあんまりじっくり見たことないんだよね、いっつも隣の千歳神ばっかり見てるからさ~」  てへぺろ★って言ってのけた。  かなやんは俺達の中で一番、美しい人を見るのが好きなのです。 「ぐぬぬ……」 「残念、永田氏」  俺は永田氏の肩をポン、と叩いた。 「で、でもエースストライカーなら誰だかすぐ分かるでござろう!いわゆるFW(フォワード)でござるから!」 「あたしたちサッカーのポジションとかわかんないしぃ」 「サッカーって野球と違ってすぐバラバラになるしぃ」 「一人だけユニフォームの色が違う人がゴールキーパーなんだよね?」 「ぐぬぬぬ!!」  いや、勿論男の俺はFWくらい知ってるけどさ……。  サッカー漫画の二次創作で知識得てるからね!(でも多分みんな知ってると思う) 「ていうか、永田氏のために来てるんだから永田氏がいなきゃ意味ないでしょ!あたしたちが何をしにトーガクに来てると思ってるの!?」  りっちゃんが永田氏に指を指しながらビシっと言った。  ツンデレヒロインのポーズだ。 「お前らは自分の欲望を満たすためだけにここへ来てるでござる」 「それもあるけど、それはついでよ、ついで!」 「絶対拙者の方がついででござろう……」 《ピーッ!!》  りっちゃんと永田氏がそんな言い争いをしていると、試合はまだ始まったばかりなのに一際激しい感じのホイッスルが鳴った。  一瞬自分達が注意されたのかと思って、俺はビックリして思わず反射的にグラウンドを見た。 「な、なになに!?今のって俺たちが怒られたの?」 「いや、何やら藤堂学院の18番がレッドカードで退場になったようでござるな」 「へ!?」  どうやら相手方のチームが何かやらかしたようだった。  すると、森くんが吃驚した顔で立ち上がって言った。 「あっ……朝比奈先輩ィ!?何やってんだあの人!助っ人!?」  アサヒナ先輩?知り合いなのかな?  どうやらそのアサヒナ先輩とやらが、いきなり反則行為……うちの高校の選手を審判に見える位置から思いっきり蹴ったらしい。  蹴られた人、グラウンドに倒れてるし!  そして担架で運ばれてるし!ひええ~!  サッカーってもともとラフプレーの多い危険なスポーツだと思ってたけど、あの人そんなに強く蹴ったのかよ……こっわ!  トーガクのサッカー部こっわぁぁ!!  どこがベルばらっぽいお耽美高校だ!夢(妄想)が壊れたよ!! 「ねーねー森っち、今退場した人って知り合いなの?先輩?」 かなやんが聞いた。 「知り合いっていうか……友達の彼氏☆そんでなくても校内の有名人!あれでも風紀委員なんだよ。確か柔道部の筈だけど、なんでサッカー部の試合に出てるんだろ……あっ!てことは」  てことは?  森くんがキョロキョロした先に、友達を見つけたみたいだ。 「やっぱり来てた!おーい!のんちん!」  のんちん??  森君が名前を呼んだ先――俺たちが座ってるところよりやや後方――に、ド派手なピンク髪をしたショートカットの、ボーイッシュな格好をした美少女が座っていた。  美少女は自分が呼ばれてることに気付くと、こっちを見た。 「あれ?テツヤくん!?」  わわ、声はちょいハスキーだけど、本気で顔が可愛い……芸能人!?  森くんのこと名前で呼んでるし、もしや彼女さんか!?  美少女は、隣に座ってた友達を連れてこっちへやってきた。  美少女の連れは黒髪可愛い系の少年だった。ちょっとこけしっぽい雰囲気の。  あれ?もしやこっちが彼氏なのか?  いや、ちょっと待てよ…… 「やっほーうテッちゃん!」 「すずちんも来てたんだな☆てゆーか色々ビックリしてんだけど、なんで朝比奈先輩がサッカー部の試合に出てんの!?それでのんちん達が応援に来てるってのは分かるけど!」  森くんの質問に、美少女が答えた。 「なんかね、昨日いきなりサッカー部の主将に助っ人頼まれたんだって。ちょっとした知り合いだから朝比奈先輩も断れなかったみたい」 「でも、試合始まっていきなり退場してたけど!?」 「足でも踏まれてムカついたんじゃないの?それか朝比奈先輩、サッカーのルールを知らないのかも……」 「あっはっは!それすっごいありえるよのんちゃん~!」  美少女の言葉にこけし君はケタケタ笑ってるけど、全然笑いごっちゃなくね!?  足踏まれただけで退場になるレベルで蹴り倒すって結構人として最低じゃない!?  運ばれた人、全然知らない人だけどさ!!  ハッ、もしかして運ばれた人が八代先輩じゃないよね? 

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