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〈8〉友達でも分からないことはある
「じゃあまずは抱き合ってください!」
「その次はキスしてください!」
「お姫様抱っこもみたい!」
「後ろから抱きしめるポーズもお願い!!目線はこっち!!」
アサヒナさんが快く撮影を引き受けてくれた途端、腐った要求が次々と飛び出す俺たち。
腐男子やってるとあんまり恐いものって無くなるよねー。
あとこう見えて(?)俺たちとはタメらしいから、どんどん遠慮もなくなってついにはタメ口になった。
「なんっか四方からカメラ向けられてるとモデルにでもなった気分だな!まあここはひとつ、そっちの選手を蹴ったワビとしてサービスするか!いいよな?ノンタン。あ、撮った写真って俺にもくれンの?」
「勿論!データ送るよ」
「よっしゃ!俺とノンタンのラブラブ写真ガンガン撮ってくれっ」
もしかして要求全部答えてくれる気なのかな?
本当に見かけによらずいい人だ朝比奈君!!
というかただ俺たちにラブラブっぷりを見せつけたいだけだな!!
需要と供給が一致するってなんてスバラシイんだ!
「写真を撮るのはいいんですけど、せっ、せめて目立たない場所に移動したいです」
「そうだな、んじゃー生徒会室でも行くか?」
「「「「行きたーい!!!」」」」
部外者が校舎内にまで入っていいのか知らないけど!
俺たちがウッキウキしながら付いて行こうとしたら、誰かにトントンと後ろから肩を叩かれた。
振り向いたら、可愛らしいこけし少年こと山田君と目が合った。
この人も俺と同じ平凡受けっぽいけど、彼氏とかいるのかな?
ってそんなこと考えてる場合じゃないね!
少なくとも彼の方が俺より可愛いです!
「な、何かな?山田君」
「お友達が一人帰るみたいだけど、声掛けなくて大丈夫なの?」
そう言われて、ハッとした。
永田氏がフラフラした足取りで校門の方へと向かっている。
「永田氏!ちょっと待ってェェ!」
俺は慌てて永田氏の方に駆け寄って引き留めた。
そういえば目的をすっかり忘れてたよぉ!!
「ごめん永田氏!つい目先の欲望を優先しちゃって……!」
「そんなのはいいでござるよ……でも拙者はもう帰るでござる。別にうちのサッカー部の応援に来たわけじゃないし、何よりリアルあこりんが……あこりんが他の男とイチャイチャしてるところなんて見たくないでござる……見たくないでござるぅぅぅ!!」
ダッ!!
「な、永田氏ぃぃー!!?」
ええええー!!もしかして失恋したみたいな気分味わってる!?
好きな女の子に実は彼氏がいたみたいな!!
でもあの人は二次元の人じゃないし、何より男だよ!?
「男だとしても嫌なのでござるぅぅぅー!!」
「そ、そんなー!!」
そういうもんなのか!?
俺には本当に分からないよ……永田氏……!!
結局、永田氏はそのまま帰ってしまった。
俺たちは校舎に入ろうとしたらさすがに先生らしき人に止められて、外の目立たない場所で思う存分資料写真を撮らせてもらったのでした。
真の目的(八代先輩観察)は果たさぬまま……。
マジゴメン永田氏。
でも、俺の心は今すごく満たされてます。
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