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〈9〉八代先輩、やっと登場する

「はぁ……」  衝撃の土曜日を迎え、日曜日が過ぎ月曜日の放課後になってもまだ、拙者の心は晴れないでいた。  あん?永田でござるけど何か?? 雨宮氏の進行だとちっとも話が進まないと判断した作者が無理矢理拙者に進行をやらせたでござる。  って、そんなことはどうでもいいんだよ!(素)  拙者の嫁であるあこりんが……何年も前のシリーズからずっと好きだったあこりんが……目の前でリアルあこりんを見つけたと思ったら(男だったけど)いきなりあんな野獣のような男のモノだという現実を叩きつけられるなんて、なんの拷問でござるか?  藤堂学院(トーガク)なんてホモの巣窟、行かなきゃよかったでござる。  それもこれも元凶はあいつ……まだ登場すらしていない八代でござる!  逆恨みだと分かっていても、一生恨んでやるでござるぅぅ!! 「ねー永田、八代先輩が呼んでるけど」 「あん?」 「うわキモっ」  その名前を聞いた途端に無礼な態度で返事をした拙者も悪いが、いきなりキモイと返される謂れもない。  まあ実際キモいので否定はしないでござるが。  教室の後ろのドアを見やると、虫唾が走るような爽やかな笑みを浮かべて拙者に軽く手を振っている八代が居た。  なんだその笑みは!貴様、空気清浄器にでもなったつもりか!  生憎だが癒されているのは貴様の周りにいるメス豚どもだけでござる。  まあいい。一言ガツンと言ってやらんと気がすまん!  拙者は八代のところまで歩いて行った。 「……何の用でござるか」 「あのさ、先週の土曜日。友達連れて試合の応援に来てくれてただろ?トーガクまで……。おかげで勝てたからお礼を言おうと思って」  気付いてたんかーい!!  試合は誰ひとりとて真剣に見てなかったけどな!!勝敗も知らん!!  でも素直に応援に行ったと思われるのも癪なので、口から出まかせを言った。 「別にうちの学校の応援に行ったわけじゃねーし。相手チームの応援でござる」 「えっ、トーガクに知り合いでもいるの?」 「当日に出来たんだよ!朝比奈という奴と、リアルあこ……」  ……あこりん……  あこりんのことを考えると、じわっと涙まで出てくる。  クソッ!!  朝比奈という男は殺したいほど憎いのに、なんで言い訳に出てくるでござるか!! 「え……朝比奈って、試合開始後にいきなりうちの澤田を蹴って退場になった奴じゃ……」 「あーあーそいつでござる」 「何であいつと知り合い……ハッ、まさか好きなの!?」 「はあ!?」  なんっでそうなる!!  殺したいっつってんだろボケがぁぁぁ!!! 「ちょっと永田ー!さっきから八代先輩に向かって何よ!その生意気な態度は!!」 「そーよそーよ!!話しかけてもらってるだけ有難いと思わないの!?っていうか何でアンタなんかが八代先輩から声かけられてんのよ!」 「身分をわきまえなさいよこのキモオタ!!」  チッ、クラスのメス豚どもがギャーギャーとうるさいでござるな。  同じ女子だろうと拙者が同じ部活の腐女子三人組を嫌いになれないのは、こいつらとは全く別の生き物だからでござる。  あいつらの思考や言動は色々と最低だけど、このメス豚どものように簡単に人を傷つけるようなことは言わないでござるからな。  ……いや、言うか。  思いっきり言ってるわあいつら。   「あのさ……俺の方から永田君に会いに来てるんだから、そんな風に彼を悪く言うのは止めてくれないかな……」 「何でですか!?八代先輩!!」 「キモオタが移りますよ!!そんな八代先輩見たくないです!!」 「そうですよ!!」 「いや、その……まいったなぁ……」  どうも八代は女にガツンと言えないタイプらしいでござるな。  べっつにどーでもいいけど。よすぎるけど。  とりあえず、今日も部活サボって帰ってやるでござる。    拙者はふいっと自分の机に戻ると、鞄を取りに行った。そして教室から出る際に、困った顔で拙者を見つめている八代に言った。 「拙者に話があるなら付いてこい八代。そしてそこのブヒブヒうるさいメス豚どもは豚の餌でも食って一生ブヒブヒ言ってろ!そして死ね、ドブス共!」 「うわサイテー!!キモい!!」 「八代先輩、こんな奴に付いて行くことないですよ!!」 「そうですよー!!」  無視だ無視。  罵詈雑言が火に油を注ぐのも分かってるのでござるが、言われっぱなしも性に合わんのでござる。  我ながらコドモっぽいというか、面倒くさい性格だとは思うが……。

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