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〈13〉不屈の腐男子パワー

「で、でも雨宮氏、拙者が謝りに行ったりしたら、それこそまた期待させてしまうというか……その、嫌われてた方が拙者的にはいいと思うのでござるが!?」  あまりデモとかダッテとは言いたくないでござるが、やむをえん! 「でもそしたら永田氏がずっと元気ないじゃん。そんなの俺が嫌だもん」 「そうは言っても、おあいこでござるからな」 「むうー……でも、告白を断るのとは別の話じゃない?ひどいこと言ってごめんなさいって謝るだけだよ?その後にあなたとは付き合えませんってはっきり言えばいいじゃん」 「そういうもんでござるか?」 「たぶん」 「……」  大人の彼氏がいるとはいえ、雨宮氏の恋愛偏差値は拙者とそんなに変わらない気がするでござる。  まあ、処女じゃなくても同じ童貞でござるからな!  しかし、わざわざ謝りには行きたくない。  行きたくはないが、困ったことに拙者もあれから八代の悲しそうな顔が頭から離れない。  別に好きだとか気になるとか、そういう恋愛的な感情ではない。 ただ傷付けてしまって、「気にしている」。それだけでござる。  それ以上の気持ちなんて無い……絶対に。 「じゃあ雨宮氏、今日の放課後は拙者に付き合ってくれるでござるか?」 「三年生の教室?もちろん行くよ!りっちゃんたちも誘う?」 「どうせあいつらは千歳シンジが目当てでござろう。うるさいし、言わなくて良し」 「でも千歳先輩、今日いるかなぁ~。どうせならナマで拝みたいなぁ、あんまり学校来てないから、俺本物を近くで見たことないんだよね!」 「南條先生はどうしたでござるか。あんまり他の男に熱を上げない方がいいでござるよ、あの先生妬くとめちゃくちゃ面倒臭そうな気が……」 「えー?でも恋人とアイドルは別モノだよ、永田氏!」  そういうもんでござるか……。  まあ、そういうもんなんでござろうな。  しかしそれだと、拙者が今でもあこりんを俺の嫁だと思っていたとしても、恋愛とは別物だとはっきり言われた気分でござる。  いや、頭ではもちろん別だと分かってはいるのだが……。 「おーい雨宮ぁ!永田ぁ!次お前らも出ろよバスケ!ずっと隅でくっちゃべってんなよ!」 「あ、ごめん!いこ、永田氏」 「ああ」  でも自分が三次元の人間と恋愛するなんて考えたこともないから、そんな正論を言われても拙者は素直に「うん」とは言えないのでござるよ、雨宮氏。 *  そして、放課後。 「八代先輩って、何組なのかな?」 「さあ?」 「南條先生に聞いてみよう」 「知ってるのでござろうか?」  雨宮氏はスマホをいじりだした。南條先生は二年の化学担当だから、三年のことは聞いても分からないと思うのでござるが……。 「あ、返事来た!C組だって。行こう!」 「あれ……なんで分かったでござるか」 「3年の化学の先生に訊いたんじゃない?」 「なるほど」  しかし、足取りが重い。なんで雨宮氏はそんなに元気でござるか?  当事者じゃないからか……。   「永田氏」 「ん?」 「頑張ってね!」 「ああ……」  もしかして、拙者の元気がないからわざと明るく振舞ってくれているでござるか?  そんな、わざわざ拙者に気を使わなくてもいいのに……。 「どうかどうか、千歳先輩が教室にいますようにぃ~!」  素かよ!!!(地味にショック)  三年の教室がある階なんて初めて来たでござる。一年しか歳は変わらないとはいえ、やはりなんだか恐いというか、恐い。 なんだかジロジロ見られてる気がする。 「おい、あいつって……」 「ああ、例の動画の奴……だよな」  動画?いったい何のことでござろう。  拙者がモブの言葉に耳を傾けている間に、雨宮氏はさっさと行動に移していた。 「すいませ~ん、八代先輩いますかー!?二年の雨宮なんですけどぉ」  いつもはおとなしいのに、たまに見せるその行動力はなんでござるか!  先日の藤堂学院でリアルあこりんのクソ彼氏野郎に話しかけていたことといい……。  ああ、腐男子パワーか。納得した。

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