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〈15〉初デートでハプニング発生

 そして、日曜日。  いや、一週間経つの早すぎんだろ!!  しかし、この一週間は色々あったでござる。 腐女子にからかわれたり、腐男子に聞いてない&役に立たない恋愛指南をされたり、腹黒化学教師にシメられそうになったり……。  はあ。  拙者の周りにはろくな奴がいないでござるな……部活のオタク仲間にはとてもじゃねーが相談なんてできないでござるし。  つーか彼らは二次元美少女の話題以外は食いつかないでござるからな。 それに彼らが自分の嫁を幸せそうに眺めているのを見ると、拙者の味わった絶望を一カケラ分くらい味あわせてやりたい気分になる。  でもそんなことしたら真剣に友達を失くすので、とりあえず今は関わらないことで精一杯だ。それに拙者の目下の悩みはあこりん後遺症よりも、むしろ…… 「永田くん、おはよう!」 「……オハヨウゴザイマス」  この爽やか空気清浄機野郎でござる。 つーかまだ待ち合わせ時間の10分前なのに、なんでもう来てるでござるか?  いや、拙者が早めに来たのは単なる常識の範囲内であって! 決して楽しみにしてたとかそんなこっちゃねーからな!! 一応相手は年上だし!先輩だし!!(タメ口きいてるけど)  イベントの時はもっと早く来るでござるし、だから、その、ああああああ!!拙者は一体誰に対して言い訳してるでござるか!! 「ふふ。俺昨日すっごく楽しみであんまり寝られなかったんだよ。ほら、うっすらとクマができてるだろ?かっこわるいよね」 「じゃあ今すぐ帰って寝ろ、永遠に」 「さ、行こっか!先にお昼を食べよう」 「相変わらず話聞いてねーなこの野郎」  それにしても、イケメンは服装までイケメンでござるな。 どこで売ってんだそんなオシャレな服。 拙者はイベント用の服でござるけど。  オタクの制服とも言われてる(言われてない)赤のチェックシャツにベージュのカーゴパンツ、あと黒のリュックだ。 シャツインはさすがに時代遅れなのでしてねーが。  一番のお気に入り私服はあこりんTシャツだったが、高額で売れたから手元にない。ちょっと惜しかったでござるな……。  いや、拙者は過去を振り返ることはしないでござる!!  あこりんは昔の女……そう、もう何とも思ってないでござるからな!!  はあ……新しい嫁、探さないと。  その時だ。 「永田くん危ないっ!!」 「え?うわっ!」 《キキィッ!!》  拙者たちがいるのは歩行者専用の通路なのに、後ろから自転車が突っ込んで来た。 「あ、あっぶな!クッソ、チャリカス野郎!!交通ルールは守れボケェェー!!!」 「永田くん、大丈夫!?」 「だ、だいじょーぶだ……」  ハッ!!  何で拙者、八代に守られるように抱きしめられてるでござるかァァ!?!? 「どこか当たって怪我してない!?」 「だ、だ、大丈夫でござるからっ!その、離れろォォ!!」  往来で密着してるのが恥ずかしすぎて、拙者は八代を勢いよく突き飛ばした。 そしたら―― 「キャッ!」 「あっ!す、すいません!!」 「あ……」  間が悪いことに、今度は拙者に突き飛ばされた八代が見知らぬ女に当たってしまった。 女は一瞬キッと八代を睨んだが、八代が爽やかイケメンな上に申し訳なさげに謝っているのを見て、すぐにニッコリと微笑んだ。 「本当にすみません!」 「いいえーいいんですよぉ、それに当たったのは貴方のせいじゃないみたいですし?」  そう言って、女は拙者の方をギロッと睨みつけた。  怖っ!!顔の変わりよう、般若か!!  しかし悪いのは本当に自分なので、拙者もとりあえずその女に謝りその場は収まった。  ……つーか、元はと言えば八代が拙者を抱きしめたりするから悪いんじゃねーか!! チャリから助けて貰ったのは有難いけど、これなら怪我してた方が良かったでござる!!  いや、痛いのは嫌でござるが。  女はひととおり空気清浄機野郎に構ったあと、スキップでもしそうな足取りでどこかへ去っていった。 「ごめんね永田くん。俺がバランス崩してあの人にぶつかったせいで」 「別に、悪いのは拙者でござるし!?八代が謝る必要はひとっつもねーでござる!」  なんだかここに居たくなくて、拙者の足取りもスタスタと速くなった。八代が慌てて後ろから付いてくる。  ……付いてくんなよ。 「永田くん、待って」 「嫌だ」 「急に抱きしめたりしてごめんね」 「別にそれは、わざとじゃねーだろ……」    きっと一緒に居るのが拙者じゃなくても、八代は同じように助けただろう。 自分が特別なわけじゃないし、ほんとは怒る必要もない。 けど、なんかイライラするのは何でだ。  さっき拙者を見てあからさまに態度を変えやがった女にムカついているのか。  それとも…… 「そうだけど……半分はわざとだよ」 「は?」 「どさくさに紛れて……ってやつ?」 「……」  わざと?どさくさ?  つまり我々の界隈で言うところの、ラッキースケベか? ……いやいや、別にスケベな展開は無かったし(あってたまるか!)使い方を少々間違えてるでござるな。 「怒らないで?せっかくのデートなんだから、美味しいもの食べに行こうよ」 「べ、ベ、別に怒ってなんか!!」  『せっかくの』デートじゃねーし!!  楽しみにしてたわけでもねーし!!  ウマいものは食べたいけども!! 「また何かにぶつかるといけないから、せめて手くらいは握らせててね」 《ギュッ》 「ハァァ!?ちょっ!離せ!!」 「ふふ、いやだ」 「聞けよオイ!!コラ!!」  目的地に着くまで、八代は拙者が何を言っても手を離さなかった。 言動は気弱そうなのに、行動はなんて強引な野郎でござるか!?  というか、拙者はなんでこんなに振り回されているでござるか……ある意味、腐男子たちの相手をするより疲れるでござる。

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