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〈21〉千歳神、降臨!
放課後、美術室にて。
「えー!永田氏ってば昨日八代先輩とデートだったの!?どーして私達に教えてくれなかったの、うっちゃん!!」
「いや、その」
「知ってたら尾行したのにー!」
「ねー!写真も撮ったのに!」
「動画も撮ったのに!」
「……全部予想が付いてたから、雨宮氏にも黙っててもらったんでござるよ。つーかお前らマジで自重しろ」
どこから情報がバレたのか(雨宮氏からに決まってるがな)、拙者は早速腐女子三人組に昨日のことについて問い詰められた。
まあ、詳細なんざ言うわけねーでござるが。
「なんでうっちゃんだけでも尾行しなかったの?」
「だって俺は南條先生とお家デートだったから……」
「そっちに呼んでくれても良かったんだよ!?」
「呼びません!!」
矛先が雨宮氏に向いてくれて助かった。
どんだけ邪魔したいんでござるか、こいつら。
いやっ、別に拙者は奴と2人でいたかったわけじゃねーでござるけど!!それならむしろ邪魔してくれた方が良かったでござるけどォォ!!
けどこいつらの場合は、邪魔をするというよりただ遠くから観察してるだけでござるからな。邪魔するよりタチが悪い。
すると、大月氏がとんでもない発言をした。
「それにしても永田氏、やっぱり八代先輩と付き合うことにしたんだね~!」
「は?」
「だって、二人っきりでデートしたんでしょ?」
なっ……
なななな、なんやてぇぇ!?(キャラ崩壊)
「べべべ別に付き合ってねーし!!デートっていうか単に二人で出かけただけだし!それも八代が強引すぎて断る隙が無かっただけだし!大体それを言うなら雨宮氏と拙者が二人で遊びに行くのもデートか!?別に拙者たちは付き合ってねーけどぉぉ!?」
「永田氏、一応部活中だからもうちょい静かに……」
ハッ
そういえば、ここに居るのはこの腐った連中だけじゃなかった……!
拙者は慌てて二次元美少女ヲタ友グループ(別名非リア同盟)の方に目を向けた。拙者のセリフはしっかりと聞かれていたらしく、彼らは気まずそうな顔をしていた。
ヤバイ、誤解されてしまったか!?
拙者、このままでは裏切り者になってしまう!!
「ち、違……」
彼らに対して否定しようとしたその時、勢いよく美術室のドアがガラッと開かれた。
美術部員が一斉に開かれたドアに注目する。
「こんにちはー!二年の永田君ってここにいる?」
だ……誰でござるか??
数秒のタイムラグ後、けたたましい悲鳴が幾つも同時に美術室中から溢れた。
「ぎ……ぎゃぁぁぁぁあああ!!千歳シンジぃぃぃぃ!!?」
「本物!?本物の千歳先輩!?」
「ほぎゃああああ!!目が!目がぁー!!」
「んあぁぁ!!千歳神のキラキラオーラマジハンパねぇぇ!!耐えられないぃぃ!!」
え……ヤツが千歳シンジだと!?
だってこの人は短髪黒髪に浅黒い肌で……拙者が昨日あの店で見たポスターの中性的な人物とは全然別人だぞ!?
つまり。
「……千歳シンジの偽物でござるか?」
「はあ!?ななな何言ってるんだよぉ永田氏!!このオーラは間違いなく正真正銘の千歳シンジ先輩だから!!偽物ってどゆこと!?2人も千歳神が居たら全俺が死んじゃうから!!つーか何で永田氏平気なの!?」
「いや、何でって……野郎なんか興味ないでござるし。てか鼻血!雨宮氏、鼻血がボッタボタ出てるでござるよ!!うわあ、こっちに飛ばすなでござる!!」
腐女子三人もとんでもない奇声を発したあと順番に失神していたので、拙者は慌てて持参していたポケットティッシュを雨宮氏の両鼻に強引に突っ込んだあと、順番に声を掛けて回った。 ああもう、世話の焼ける奴らでござるなあ!!
すると、千歳シンジと思われる超絶イケメンが拙者の方にゆっくりと近寄ってきた。
そういえば、こいつ拙者に会いに来たのか……?
二年の永田は拙者しかいないでござるからな。
はあ、イケメンがいったい何の用でござるか。
警戒心マックスでつい睨んでしまったが、千歳シンジはニッコリと爽やかな笑みを浮かべて、拙者の睨みをサラリと受け流した。
「千歳シンジは俺で、きみが昨日ポスターで見たのはRION だよ」
「え……」
「きみがシュートの好きな永田君?部活中に悪いけど、話があるからちょっとだけ付き合ってくれない?」
昨日拙者が見たのはリオン……?て、リオンって誰でござるか。
ああ、あの中性的なモデルか。
それと、シュートというのはいったい……?
もしや、八代のことか!?
滅茶苦茶行きたくないでござるけど、この空気の中で千歳シンジの申し出を拒否しようもんなら、後で部員たちに袋叩きにされそうでござるな……。
仕方が無いので、拙者はおとなしく千歳シンジに着いていくことにした。
後ろからコソコソと腐女子と腐男子が着いてきているのも気付いていたが(おい貴様等、それで隠れているつもりか?)敢えて放置した。
千歳シンジと完全に二人っきりになるよりマシだから、というのもある。
でもあいつら、拙者がピンチに陥ったところで絶対助けてはくれないだろうけどな!
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