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キスのしかた③

 もはや核弾頭レベル。  割りと押さえてるつもりの理性に容赦ない一撃を加えてくるから啓太にはたまらない。  それなのにそんなこと全然気がついていないようで、眞澄は居住いをただし、正座のまま正面に啓太を見据えた。  ―――どうすればいいかって……。  教えを請われている。  色沙汰に明るくないとは分かっていたが、キスの手解きまで要求されるとは正直思っていなかった。  ―――いや、ある意味、めちゃくちゃ興奮するけど。  全部が初めてなんて男冥利に尽きる。  処女は面倒くさいなんて宣う不届きものもいるけれどやっぱり、真っ白なものを汚す背徳的な悦楽は、ある。  「キス、したい。です。先輩と、もっと」  唇がそこで留まって次の言葉を探している。  考えるように下方に視線を投げ、思い至って赤面し、伺うような視線が帰ってくる。  「もっと、エッチなのも、」  「えっ、、」  ―――っちってなんだ。  相手は初だ、先を急ぎすぎちゃいけない。  大事にしたい、泣かせたくない。  甘くて気持ちいいことだけ与えて、甘やかしてやりたいって思う気持ちを、乱暴でも泣かせても傷つけてもいい、自分のものにしたい、自分を刻み付けたいと願う欲が掻き乱す。  ―――エッチなのも、したい。  口のなかで反芻して、意味を考える。  もっと、エロいこと。  したいことをあげていったら欲望にキリはない。  もっと、口の奥まで侵したい。  頭のなかが溶けるようなキスがしたい。  細い首筋に食らい付いて痕を残して、自分のものだって宣言したい。  白い肌の全身を隈無く見たい。  舌と、唇と、この手のひらに触れられたことのない場所に、ひとつ残らず触れてみたい。  その無垢な顔が、戸惑いながら快楽に溺れる様をじっくり味わいたい。  その小さな唇で、えずきながらしゃぶってほしい。  思い連ねたら果てどなく溢れてくる欲望ばっかりだ。  「先輩、」  おずおずと開いた唇に誘われている。  理性を試されている。  大きく、深く息を吸い込んで、吐き出す。  「舌、入れる」  なんの宣言だと思いながら啓太は自分の頬がぶわと熱を持ったのを感じた。  「できるだけ、鼻から息、して。そうしたらあんま苦しくない」  眞澄は唇を一文字に結んでこくと首肯する。  白い耳まで真っ赤に染まっている。  「それでも苦しかったら、肩でも腕でも背中でも、叩いて」  そうしたら、止めるから。  なんて言いながらやめられる自信なんて一ミリもない。  肩に触れる。  バスケやってる癖に細い肩は多分元々線が細いからだろう。  啓太の同い年の兄弟がサッカー部とバスケ部にいるけれど、部内でも群を抜いて眞澄は細くて、華奢だ。  大会にいけばマネージャーと間違われるし、どうみたって運動部には見えない。  頑なに閉じたままの唇に、唇が触れる。  それでも、真澄の放つシュートが誰よりも綺麗な弧を描いて、リングに触れもせずに吸い込まれていくのを、啓太は知っている。  触れるだけの口づけ、離して、伺うと眞澄の睫が震える。  「目、閉じる?」  先手を高じて小さく呟くと小さな頭が横に触れる。  「見てる。見て、たいです。」  「そっか」  それだけ呟いてもう一度唇を近づけた。

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