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同級生と性講座①
「で、ヤってもないのに惚気?」
「仕方ない。啓太今脳ミソ花畑、足が地についてないから。」
他人から見たら全く啓太と同じ顔をした人間がふたり、片方は肉を咀嚼したまま、他方は味噌汁を啜りながら啓太を嗤う。
「惚気じゃねーし、花畑じゃねーよ」
添え物の千キャベを箸で掬い、口の中に押し込む。
地に足がついてないのは否定しない。実際ふわふわした感覚で夢か現か判らなくなる時があるから。
「で、付き合って半月?やっとベロチュー?」
「好きになったのって去年の5月だっけ?」
「そんときは啓太のこと眼中なかったもんね、あいつ」
本人目の前にして遠慮のない物言いで、三つ子の兄、翔太と弟、優太はさもおかしげに嗤う。
「お前らと違って理性的な愛育んでるからな」
気がついたら中抜けして屋上でぱっちゅんぱっちゅんしてるような関係じゃねーんだよ。
反論にならない反論を口に乗せると箸で肉をつかんで口に放り込む。
2年生の座席をみやると、眞澄はいつものように少しはにかみながら、他の2年生と談笑してる。
「好きなら気持ちいことしたいよな?」
「好きになったらセックスしたいってフツーじゃねぇの?」
翔太と優太はお互いに顔を見合せて心底信じられないと言うような顔を見せる。
「中坊まで俺らと盛ってたヤツがよく言うような」
「うぐっ」
「毎晩一緒にシコってたのな」
「ぶっふ」
口に含んだ味噌汁を翔太の言葉で詰まらせ、優太の言葉で吹き出した。
「きったねー!!」
ふたり揃って破顔する。
優太の方が色が白いが、笑った顔は良く似ている。
多分、自分も笑えば同じ顔をしているのだろう。
そして、本質は同じだ。
エロいことが好きで、堪え性がなくて、楽しいことに流される性格。
「良く保つよなー」
ダスターで噴き出したものを片付けるとどちらからともない言葉聞こえてきた。
「去年の半ばくらいからはなんかすでにいい雰囲気だったじゃん?」
お互いの部屋いったりとかさぁ。
片付けてる啓太の皿から翔太が肉を一枚浚っていく。
「クッソ生意気なガキが良く啓太になついてるから、もう先輩から鞍替えして毎晩オトナのおベンキョーしてんのかと思ってた」
「その割りには隣から聞こえてくるのは健全な笑い声だったけどね」
「その健全な勉強会の横であっひんあっひん喘いでたのは誰だよ」
周囲を憚る声で問えば、翔太が元気良く「はーい!」と返事して優太はしれっとそれを受け流す。
「毎日毎晩盛んすぎるんだよ、隣から卑猥なもの音がする度に変な空気になるからやめろよ」
今更にもほどがあるけど、翔太と優太は仲が良い。
お互いの性器をしゃぶりあったり、アナルにぺニス突っ込んで抜き差しするくらいには。
「何言ってんの。雰囲気作りしてんじゃん」
「余計な世話だね」
「そうでもしないと啓太、手も出せないでしょ」
「俺は俺のペースでいくから良いんだよ」
憚っていたはずの声を怒らせて、ダスターを優太に投げつける。
翔太はからからと笑い、優太は少し肩を竦めた。
「啓太が思ってるほど大事にしてほしいのかな、小松崎は」
思わせ振りな言葉で優太は視線を眞澄に走らせる。
小降りな口を大きく開いて眞澄はしょうが焼きにかじりつく。白くて硬い、滑らかな歯でそれを噛みちぎる。
表面の艶やかな前歯は舌触りにも滑らかで、歯茎の境目に舌で触れるとふるりと体を震わせていた。歯の裏側まで撫でて、口蓋を触ると口の中に蜜が溢れた。
思い出して反芻して、自分の口の中にも唾液がたまる。
「案外、もっとして欲しいとか、思ってるかも知れないよ」
指先で啓太の分のしょうが焼きをつまみ上げ、優太はそれを口に放る。
「俺ならさっさと奪って欲しいとか、奪いたいとか、思っちゃうけどね」
優太の手を取り、調味料がついたその指先を翔太が口に含んだ。
優太は少し目を見開いて、やり場なく視線を逸らす。
―――どっちが惚気だ。
目の前でいちゃつく兄弟に、啓太は呆れを孕んだ溜め息を吐き、夜食に何を食おうか考えた。無意識に眞澄を求めた目が2年生の座席をさ迷う。
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