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同級生と性講座④
本当はもう少し勉強を教わりたかった。
と言うよりは、啓太と一緒に過ごしたかった気持ちは、ある。
―――でも、消灯時間だし。
腹の中で言い訳しながら、ホントはちょっと安堵している自分がいる。
もっとキスして欲しいし、もっと触って欲しい。
―――でも、その先は?
キスをして、お互いに触れあったら当たり前だけど勃起して、勃起したら、それを治めるには射精する必要がある。
絶対では、ないけれど。
―――どうしたら、啓太先輩は射精するんだろう。
キスをしたときに、啓太のジャージが膨らんでいるのを見た。その形は自分のものと同じだろうか。風呂に入ったときも、そんなまじまじ見るものじゃないし。
―――オナニーしたことがない、なんてそんな純情ぶったことは言わないけれど。
啓太はどんな風にするんだろう。
布団の中で?自分の下着に手を入れて?
勃起した性器だけ下着から取り出して、手で扱くんだろうか。
あの肉刺だらけの、広い掌で、包み込んで、上下に。
「んんっ」
ふるりと、体が震えた。
その手が、自分の性器に触れているような気がしてしまった。
ささくれが、表皮を引っ掻く、感じ。
「眞澄」
「え。あ、」
声を掛けられて頬の逆上せが増す。
「コーヒーがいい?紅茶がいい?」
「いや、あ、うん。」
「それとも啓太くんとこ行く?」
しれっと切り出された名前に言葉を失う。
あの柔らかな笑顔が頭の中を占めて自分のヒワイな想像に罪悪感。
「いや……いか、ない」
―――行けない。
申し訳なくて。
こんなことばかり考えている自分は、あまりにもフラチで、ヒワイで、ハシタナクて、インワイなんじゃないかと思う。
本当は皆、そんなことより、ただ、話をして、笑い合って時々、抱き合って、、それくらいがちょうど良いと思ってるんじゃないかって思う。
―――全部見せたいとか触って欲しいとか。やっぱりおかしいのか?
そう考えると頭の中がくしゃくしゃになって、今までの自分をスタートから全部書き換えたくなる。
なにしろ、告白の言葉が「もっと触って欲しい」だ。もう、一から全部ヒワイだ。
「あぁぁぁぁ……」
音のする溜め息と一緒に絶望吐き出して陽樹の私物の座卓に伏す。お互いにひとつしかないものは共有にしてるからあまり気にしない。
「何をそんなに絶望してんの」
付した目の前に甘い匂い。
湯気の立つマグの向こうに陽樹。
「いや、別に」
「ふぅん」
はぐらかした答えに気を悪くするでもなく陽樹は分厚い本を開く。片膝を立てた怠惰な姿勢は余り似合っていない。
「出来れば俺は突っ込む側になりたいね」
「は。」
「あの体に触れたいとか、首筋に跡を付けて自分のものだって周知したいとか、いっそクラス全員の前で犯して誰も手を出せないように牽制したいとか、腹が膨れるくらい中に出して溢さないように蓋をして、俺で埋め尽くしたいとか、どんな醜態も全部見せて欲しいとか、」
熱烈な愛情表現に眞澄は思考がついていけなくなって眼を丸くした。陽樹はぺらとページをめくりながら、なんてこともないように話す。
「いっそ、誰も入れない部屋に閉じ込めて自分にしか頼れなくしたい。死ぬまで。太陽にすら見せたくない。あの目に、自分以外を映させたくない」
なんて。
少し戯 けながら、指先が震えていた。
「そんな風に思うくらいには、センセイが好きだな」
天板に肘をついて頬を支え、陽樹は呟く。
マグに注がれた甘いミルクティーが少しずつぬるまっていく。
「そういう想像って、する?」
「そういう?」
「いや、センセイの裸、とか」
「え。しねーの?」
問うたのは眞澄なのに逆に問われて心臓がぎゅうって音を立てた。
「……する」
「するよな。」
妙な同志感に何となく気まずくてミルクティーを啜る。
バカみたいな甘さが舌の上に広まった。
「……多分、啓太くんもしてるよ」
名前を耳が拾うだけで、胸がきゅっと狭くなるのは、そういう仕様なんだろうか。
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