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ひとりエッチ✖2②
完全に俯いたら羞恥心が爪先から這い上がってきた。
―――恥ずかしい、恥ずかしい、恥ずかしい、恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい!!
ぎゅっと制服の腿を握るとチェック模様がひしゃげた。
前が全開になったブレザーの裾が煽られて翻る。
啓太からの反応はない。
―――絶対、引かれてる。引かれてる。
血の気も一緒に頭から爪先へと引いていく。
そのはずなのに頬は熱いままで心臓は何度も小爆発を繰り返して血液を体内へ巡らせる。
「……いいの?」
沈黙に耐えかねて視線をあげたとき、上気した啓太の目と、潤んだままの眞澄の目がまともにぶつかった。
「触って、いい?」
伺うような眼の中には、あの虹彩が見えて心臓が一瞬止まりそうになった。
今にも泣いてしまうんじゃないかと思うくらい、啓太の目は潤んで、輝いている。
詰めた息が堪えかねて爆ぜる。
小さく顎を引くと、啓太の頭が眞澄の首筋に埋まって、ざわざわ落ち着かなくて、ぶると体が震える。
―――好き。
だから恥ずかしい。
―――好き。
だからもっと恥ずかしこともしたい。
「ん、」
ちゅっと小さく皮膚を吸われた。
粘膜が触れている柔さに、そこを中心に痺れるような甘いのが体の奥に染み渡っていく。
「痕は、付けてないから」
吐息混じりの声が耳を擽る。
小さく首を竦めて体を縮めた。
『この後の授業』を気にして安堵する自分と、『この後の期待』を裏切られたように感じてしまう自分と。
どちらが本物かわからなくて眞澄は変な気分になる。
啓太の腕が腰を掬い上げるように抱えて、優しい拘束が逃げ場を奪う。
「ぅ、あ。」
シャツの上から胸を撫でられる。
さっきみたいに変な声が出ても啓太は触れるのを躊躇わない。
丸くきちんと切られた爪が小さな乳首を引っ掻く。引っ掻かれだ場所がびりって痛む。
痛いのに、もう一度してほしいなんて思ってしまう。
大きな掌が薄い肉付きの胸全体を包み、力を込める。
「んっ、、」
痛くはない。
ただ、心臓を直に触られてるみたいでぎゅうぎゅう苦しくなった。
苦しくて、切なくて、でも、嫌な感じじゃなくて、鼻と耳の奥がつんとする。
「は、ぁ。」
繋がれていた手に離れられて行き場を失った手が、ブレザーの裾をいじくる。
シャツの下、掌の中で乳首が乳輪ごと潰される。
水の中で呼吸するような息苦しさに、腰が震える。
―――ひとりエッチで、乳首触ったことなんてないのに。
啓太に触れられてると思っただけでぴりぴり、小さな電気信号が下っ腹の中にじんわり広がった。
「眞澄って」
熱い吐息が耳朶に触れる。
薄いシャツ越しに啓太の体温を感じて甘い気持ちが胸に広がって、アソコが苦しい。
「普段、インナーとか着ないの?」
「え。」
「ほら、バスケは部Tとか、あるだろ?」
少し体を離して、啓太は微かな理性に縋るみたいに眞澄の額に自分の額を重ねた。
ふっと、短く息を吐く。
「あ、いや、普段は着てるんですけど、今日は、午後練ないし、朝練で汗かいたから、脱いじゃって、それで……」
へどもどしながら言い訳めいてまくし立てると、啓太はふにゃと顔を緩ませて笑う。
「よかった」
笑うと困ったように八の字になる眉が、目元による笑い皺がキュウと胸を締め付ける。
「普段からこんな肌が透けちゃう感じだったら、俺、嫉妬で変になるよ」
「嫉妬、なんて」
烏滸がましい。
嫉妬してもらえるなんて、烏滸がましい。
好きだって言ってもらえて、こんな風に笑って、触って貰えるだけで嬉しいのに、そのうえで、嫉妬なんてしてもらえるなんて。
「するだろ」
啓太は間の狭い眉と目の間をさらに狭くして目を見開いた。
「恋人なんだから」
「恋人」
改めて呟いた言葉にぎゅぎゅぎゅんっと心臓が競りあがってきた。
「ひとりエッチより、眞澄に触りたい」
これじゃ、約束違反かなって、啓太はまたあの困り顔で笑う。
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