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ひとりエッチ✖2③

 「そ、んなこと、ないです」  触ってほしいです。  いっぱい。全部。  また変な言葉が口を突きそうで下唇をきゅっと噛んだ。  「直に触っていい?」  「じか、」  直。  その示す意味を考えて、啓太の唇を、手を目で確認してしまう。  しなやかに日焼けした、筋張った手だ。  指が長く、掌は肉刺が幾重にも出来て硬い。  いつも想像していた事が、今、目の前にある。  直接肌に触れられて、もっと近くに啓太を感じたい。  布越しの隔てられた感触だけじゃなくて、頬や、耳や、首筋で感じるあの熱くて甘やかな痺れを、全身で感じたい。  その、武骨な手は意外と体温が高いことを知っている。  胸に触れられたら、どんなふうに焼け付くのだろう。  その肉刺の固さは、どんな感触なのだろう。  一つ息を飲んで小さく頷く。  額に唇の張った肉の感触が触れる。  首筋に指先。ささくれの引っ掛かり。タイの結び目に指がかかり、シュルと従順に解ける。  シャツのボタンを太い指が器用に、丁寧に外していく。  肌が少し冷たい空気にさらされると、毛穴が窄まって、鳥肌が立つのがわかった。  「寒い?」  「少しだけ」  「ごめんね」  我慢して。  そんなやり取り。下から二つ分だけ残して暴かれる。  「ん、」  鎖骨の下あたりに掌が触れると首の付け根にさわと微かな愉悦が立った。  「あったけ」  ―――先輩の手は、熱いです。  そう言いたかったのに、恥ずかしいのが邪魔をして言葉にできない。  思っていたよりも熱く感じるのは恥ずかしいからなのか、それとも自分の熱もそこに集まっているからなのか判らない。  心臓が早い。  掌はわきの下に差し込まれて、胸板を掴む。  「薄っ」  「なっ!」  驚愕したように爆ぜた声に色情の羞恥ではなく屈辱の羞恥が沸き上がる。  「眞澄、ホントに体薄いな」  「や、だからって掴まないで下さ……!」  ぐいぐいと肋を握られて、掌でつかめてしまう事実を叩きつけられる。  「啓太センパイの手が。」  キュウと噛み締めた唇から言葉を吐きだす。  力の籠った眉間が不機嫌を示して啓太を見ていた。  「デカくて、長いんです」  細やかな反抗が啓太には煽情的でぎゅきゅと心臓が変な音を立てた。  「ちょっと、シャツ、持ってて」  啓太に言われてなんの疑いもなく眞澄は自分のシャツを開く。  その様を啓太は少し身を引いてとっくりと眺めた。  「……えろ」  「え?」  啓太の言葉に小さく小首をかしげて眞澄は自分の状況を目視で確認した。  だらしなく乱れたネクタイ。  シャツの裾は中途半端にスラックスからはみ出し、自分から暴くようにシャツの前を開いて見せたその有様。  「ひんっ」  あまりの恥ずかしさに変な声が飛び出た。  声すら食らう口付けにごつと後頭部を壁にぶつけた。  ―――ちょっと、痛い。  そんな思考も一瞬で、口の中に侵入してきた舌は頭の中までかき混ぜる。  舌が舌を絡ませ、唇が隙間なく重なる角度を探す。  ぴちゅ、くちゅ、と音が頭の中に反響する。  「ん、ぅん、」  息ができない。  酸欠にくらくらする。足に力が入らない。  「んうっ!」  すりりと、親指の腹が乳頭の先端を掠った。  しびびびび、と細い電気が乳首の先端から腹の奥に向けて突き刺していった気がした。  「???」  驚いて唇を離す。とろりと、どちらのものとも知れない蜜が垂れ、唇と唇を繋いで撓み、落ちた。  困惑するうちに乳頭の刺激はくすぐったさに変わる。  もぞもぞと蠢いて笑いがこみあげてきた。  「ん、ふっ、くふっ」  笑うのはよくないと軽く握った拳で口元を隠して堪える。  だが、その度にくひゅっくひゅっと肋がしゃっくりを起こすので啓太には眞澄が笑っていることなどお見通しだった。  「眞澄って、くすぐったがり?」  「いや、そんなこと、わんっ!」  かりと爪の先で引っ掻かれたとき、あのしびびびがビリビリビリって勢いで股間に突き抜けた。

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