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口の使い方④
―――これは、天然なんだろうか。
あまりにも真剣な顔で、無垢な目で繰り出された攻撃の威力は半端ない。
勉強する、なんて真面目っぽい言葉に卑猥さが滲む。
啓太の頭の中でぐるぐる回る。
可愛くて愛しい後輩のアラレもナイ姿。
その唇で、さっきみたいに、いやさっきよりも深く剥き身の性器を受け入れる。ベロアみたいな感触の舌が、居場所をなくして裏筋に触れる。自分のカラダがどんな風にさわられたら、どんな風に感じるのか知るために、その、指先の丸い、白い指で自ら乳首を摘まむ。
それを、全部、傍で見て、教えて、強請られたら。
―――いやいやいや……。
無知をいいことにとんでもないことまで教えちゃいそう。
思いやりとエロが混在して鬩 ぎ合う。
うっかりするとさっきみたいに理性のストッパ外れかけてヨクボーのまんま動いちゃいそう。
だってすでに。
無意識につきだした唇にキスがしたい。
眞澄はいかにも真剣な話をしていますと言った風なのに、啓太は頭の中でキスがしたいとばかり思って考えている。
考えている。
「せんぱい?」
「……いや、」
見透かされたみたいなタイミングに目をそらした。
……オベンキョー。
是非していただきたい。
やってみたいあれやこれやは山のよう。
でも幻滅されたらとか、考えればたまらない。
―――優しい先輩は優しい先輩のままで。
いたら多分チンコ破裂する。
シたいことなんて尽きない。壊れるくらい俺だけのものにしたい。自分は兄弟に比べて欲薄だと思ってたけど、そんなことはない。
ひたすらに、眞澄がほしい。
鍵を掛けて閉じ込めて甘くて気持ちいいことだけ与えたい。俺にならどこまで許してくれるのか際どいこともシたい。
それと、比べたら。
「キスがしたい」
これくらい可愛らしい欲だ。もう一度キスがしたい。触れるだけでいい。
その唇にもう一度キスがしたい。今。
初なガキみたいな言葉に羞恥が後からやって来て両手で口許を覆った。真正面にいる眞澄を直視できない。
「ど。」
くきゅと息を飲む音がした。
可愛くて、素直な眞澄は、多分これを、
「どうぞっ」
拒めない。
むにゅと唇をつきだしてアヒル口になる。
キスにその顔は必要なのか。
しかも、また何か難題に挑むような顔をして。
ふひゅ。
口から息が漏れた。
キスがしたいといわれてこんなに必死の顔をする。可愛くないはずがない。愛さない訳がない。こっちにまで心臓の鼓動が聞こえてきそうだ。
ちゅ。
リップサウンドを微かに鳴らして唇を離した。眞澄はあからさまにキョトンとして目のでかいアヒルみたいになってる。
「沢山ベンキョーしないとな」
突き出された唇を人差し指の背で撫でる。まだしっとりと濡れた唇は柔らかくて魅力的で、啓太の雄を煽ってくる。
チャイムが響く。
「次、矢野の現社だ」
眞澄は?と問いながら手を取ると真っ赤顔でうつむいたまま、腰をあげる。
「数B、です」
「代わりてー」
「それは、無理ですよ」
少し唇を尖らせて眞澄は答える。
「5限、フケちゃったから6限はでないと」
「だな。」
棟屋の扉を潜ると上履きのゴムが床に擦れて鳴いた。
繋いだ手は多分離した方がいい。絡んだ指が名残惜しく離れる。
「よ、るは」
詰めて吐き出した声が少し大きい。
「ベンキョー、教えてください」
決死の形相の眞澄は少し怖くて凄く可愛い。
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